全2668文字
PR

治験に潜むアナログをなくす

 aSBo Cloud Systemは耐改ざん性の高さを特徴とするが、これは治験データがハッカーの攻撃対象になりやすいというわけではない。治験データの最大の敵は治験関係者なのだ。治験の結果をよく見せたかったり、ミスを隠したかったりといった理由で、関係者が治験データを改ざんするという問題は後を絶たない。高血圧薬のディオバン(一般名バルサルタン)を用いた医師主導型の臨床試験でデータ改ざんが行われた「ディオバン事件」は逮捕者まで出た例として有名である。

 治験データの出発点となるのは電子カルテに書かれた臨床所見や医療画像、バイタルデータなどだ。こうしたデータのうち治験に必要な部分をEDC(Electronic Data Capture、電子的臨床検査情報収集)と呼ばれるシステムに転記することで、製薬企業側がインターネットなどを経由して情報にアクセスできるようになる。

従来はデジタルの間にアナログな工程が挟まれていた
従来はデジタルの間にアナログな工程が挟まれていた
(出所:アイロムグループ)
[画像のクリックで拡大表示]

 電子カルテなどの情報はもともとデジタル化されているものの、元のデータをEDCに転記するのは医療機関の担当者や治験支援業務を担うCRC(Clinical Research Coordinator、治験コーディネーター)が手入力で行うことが多い。また、元のデータとの照合作業も人の手作業で行われる。「これまでの治験はデジタルとデジタルの間にアナログの過程が存在している状態だった」(アイロムグループ担当者)。

 aSBo Cloud Systemは元のデータを出力する電子カルテや医療機器などのシステムと連携しており、またこのクラウド自体がEDCの機能を兼ねているため、人間の手作業によるデータの転記というアナログなプロセス自体を省略することができる。アナログな過程が存在することのデメリットは人的コストと人的リスクの大きく2つが挙げられる。このうちアイロムグループが特に重視するのは後者だ。

 治験データをブロックチェーンで管理するプラットフォームを用いれば、製薬企業や治験支援会社は開発プロセスの信頼性を担保できる。また、転記や整合性確認といった手作業も省略されるため医療機関やCRCの負担軽減にもつながる。「人間が介在するが故にそのデータが確かかという確認作業が必要になる。人間が介在しなければ転記ミスや意図的改ざんの余地もなくなる」(アイロムグループ担当者)。