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 新たな医薬品を販売するには、その性能を確かめる「治験」を実施する必要がある。治験には数万人が参加する場合もあり、大量の個人情報データを安全に効率よく扱うことが欠かせない。

 治験支援大手のアイロムグループは、ブロックチェーン技術などを用いて治験データを管理するプラットフォームの提供を2021年6月に開始した。治験データの改ざんを防ぐとともに、データの転記などに費やす現場の負担軽減を目指す。将来的には治験の在り方を変える可能性がある。

aSBo Cloud Systemの全体像のイメージ
aSBo Cloud Systemの全体像のイメージ
(出所:アイロムグループ)
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 治験とは一般的に、製薬企業が開発する新薬の性能を確認するために、医療機関で実際に人間に投与して経過を観察する試験のことを指す。医療機関から集めたデータを基に、製薬企業が有効性や安全性を統計的に検証する。製薬企業はこうした治験の結果をもって承認機関に新薬の製造販売承認を申請し、それが許可されることで新薬として販売できるようになる。

 アイロムグループが提供を始めた「aSBo Cloud System(アスボ クラウド システム)」は、こうした治験データを統合管理するプラットフォームだ。治験は複数の医療機関で実施され、特に最終段階の第3相試験は数百から数万人という規模で行われることが多い。医療機関から出てくる大量の治験データの信頼性を担保しつつ集約し、製薬会社が解析に利用しやすいような形にするのがプラットフォームのコンセプトとなる。

 信頼性の担保に使うのは主にブロックチェーン技術と秘密分散技術だ。aSBo Cloud Systemは電子カルテや医療機器などと連携し、基となるデータを直接クラウドにアップロードできる。この際にデータを断片化して保存することで秘匿性を確保する。またブロックチェーン技術を組み合わせることで、いつ誰がどんな変更を加えたかを記録できるようにし耐改ざん性を担保する。また、集められた情報をAI(人工知能)で自動的に構造化することで、元のデータとの照合作業もしやすくなる。