全4333文字
PR

 このような構造とすることで、VAIOのCFRPは質量当たりの弾性率(剛性)がアルミニウム合金やマグネシウム合金の約2倍と高い。繊維の方向を調整すれば強度のメリハリも付けられる。今回はそれに加えて、形状の工夫でも剛性を高めようとしたわけだ。

 構造材の剛性は、断面形状(断面二次モーメント)でも高められる。平面のままでは曲げやすくても、端部を曲げたり、湾曲させたりして断面形状を変えれば曲げにくくなる(図2)。従来のVAIOでもそうした工夫は取り入れてきたが、連続繊維のCFRPではこの「断面形状の変更」が難しかった。

図2 CFRPの立体成形
図2 CFRPの立体成形
平面ではなく、端部を折り曲げたりボスを形成したりすると剛性は高まる。写真は試作品。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 理由の1つが、CFRP成形時の曲げにくさである。成形ではプリプレグ(炭素繊維に樹脂を含浸させたもの)を熱プレスするが、薄いシートとはいえ曲げ部分の内面と外面では長さが異なってくる。無理に曲げると、炭素繊維が切れたりしわが寄ったりしてしまう。加えて、炭素繊維そのものにある程度の柔軟性はあるものの、曲率半径の小さな「エッジが立った曲げ」も難しい。

 さらに、「コの字」や袋状に曲げるような形状を熱プレスで実現するのもハードルが高かった(図3)。VAIOではCFRPを熱プレスで「月産1万台単位で成形できる」(同社)という量産技術は確立していたが、緩やかな湾曲や絞り形状のような形に限られていた。上下に型を動かしていく熱プレスでは、オーバーハング部(型の動く方向に対してアンダーとなる部分)が潰れてしまうからだ。

図3 VAIO Zの天板
図3 VAIO Zの天板
写真は、成形後に不要部分を加工で取り除いた後の状態。(写真:スタジオキャスパー)
[画像のクリックで拡大表示]

手作業でシートを折る

 こうした課題を解決するため、VAIO Zでは熱プレス前のプリプレグの段階で形を整える方法を採用している。最終的な形状を確認するための治具は使用するが、基本的に「職人さんの手作業」(同社)だ。内側と外側で折り曲げた際の炭素繊維の長さの差を吸収する方法については詳細を明かさないが、多層構造となっているプリプレグの各層を接合するタイミングを調整しているようだ。