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 特に難しかったのが、天板のヒンジ部両端で袋状になっている部分。実は、この部分の形状は当初の設計案では90°ずつ2段階で曲げるだけだった(図4)。それを、内側に曲げるだけでなく、端部をふさぐような壁を設けて剛性を高めている。

図4 天板の試作品
図4 天板の試作品
従来品(写真奥)のヒンジ側はアンダー部がなく、2回折り曲げる形状だった。VAIO Zでは、鋭角に折り曲げた上で、両端に壁を立てた形状(写真手前)へと変更した。(出所:日経クロステック)
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 これを一体成形するにはどうすればいいのか。VAIOは紙のモデルで試行錯誤し、端部に関しては2方向から折り曲げたシートを重ねる方法に行き着いたという(図5)

図5 折り方を検証した紙のサンプル
図5 折り方を検証した紙のサンプル
1枚の平面をどのように切って折り曲げるかを検証した。この形と折り方は最終的なものではない。(出所:日経クロステック)
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 手作業とはいえ、プリプレグの状態では目的の形状を得られるめどが立った。次の問題は、これをどう熱プレスで硬化させるかだ。アンダー部が潰れないようにしなくてはならない。一般にアンダー部の成形にはスライド型の利用が考えられるが、「スライド型は使っていない」(同社)。これも具体的な手法については明かさないが、型の上下動だけで潰れないようにする方法としては、アンダー部に支えとなる部材を挿入するやり方が想定される。

 また、熱プレスの型が動く方向に対して直角に圧力を加えたい部分がある。特に、天板の袋状部分の側面はプリプレグを重ね合わせるので、横方向に力を加える必要性が高い(図6)。この部分についても、折り曲げたプリプレグを型が上下動する熱プレスで成形すれば済むよう、プリプレグの切り抜き方や折り曲げ方、型形状などを工夫した。

図6 天板のヒンジ部
図6 天板のヒンジ部
長方形のプリプレグを切り抜いてから折り曲げ、熱プレスで硬化させる。右手前の側面は、プリプレグが折り重なっている部分。写真は、成形後に不要部分を削除した状態。取り除いた三角形の空間の奥に見える部品は、組立工程で接着した樹脂部品である。(出所:日経クロステック)
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 こうして熱プレスによる硬化が完了した部品は、不要部分を切り離して最終形状に仕上げる。輪郭に加えて、キーボードのキーが入る部分やネジが通る穴を開ける工程だ。袋状部分のような立体部を加工するのも今回が初めてだった。型抜きやNC工作機械による切削加工などさまざまな加工方法の中から、部位ごとに最適な方法を選んでいったという。

 VAIO ZのCFRPはプリプレグの折り曲げ、成形、後加工、塗装と多くの協力メーカーの手を経て実現している。後加工も部位によって加工メーカーは異なる。材料の供給元は東レだが、同社だけでなく日本各地のものづくり企業の技術力が結集した結果として、今回のCFRP部品を造り上げた。