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ディスプレーを真っすぐ差し込む

 部品の組み付け方が根本的に変わったものもある。液晶ディスプレー(LCD)パネルの組付けだ。従来は天板にLCDパネルを載せ、その上からベゼルで挟み込むような組立手順だった。ところが、VAIO Zでは天板の両端をコの字形に曲げてベゼルを一体化させている。

 そのため、コの字形の部分にLCDパネルを差し込むような作業になる。差し込んだ状態での上下の隙間はほとんどない。LCDパネルの両脇にはカメラやアンテナの配線を通す必要があり、これらの配線をコの字部分のスペースに配置した上で、LCDパネルを差し込む。正しく差し込まないと、配線を断線させたり、LCDに大きな負荷がかかって破損させてしまったりする可能性がある。

 そこで、まずはLCDパネルを天板へと真っすぐ差し込めるような治具を作製した。天板の湾曲を補正するように固定した上で、LCDを差し込むガイドと押すための取っ手を設けた(図11)。さらに、LCDに加わっている力を検知するセンサーを追加し、異常がないかを確認しながら作業できるようにもしている。

図11 天板に液晶ディスプレーを差し込んでいる様子
図11 天板に液晶ディスプレーを差し込んでいる様子
(写真:益永淳二)
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 こうした組立工程での取り組みは、CFRPを立体成形するという基本方針が決まった開発プロセスの初期段階から始まった。部品の一体化や点数削減は軽量化や組立工数の削減に寄与するが、従来の造り方が通用しなくなる原因にもなる。CFRP部品の立体成形技術に加えて、新形状に対応した組立工程での工夫は不可欠だった。

CFRPのポテンシャルに期待

 CFRP採用によって、VAIO Zの最軽量モデルは約958gを実現した。「インテルHシリーズプロセッサー採用ノートPCとして世界最軽量」(同社)とする。軽量化に加えて、内部の容積も拡大。結果、大容量バッテリー搭載による最大約34時間の連続駆動、2つの冷却ファン搭載による高速プロセッサ搭載も実現した。

 ノートPCのボディーの軽量化材料としては、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの金属を採用する製品も多い。その中でVAIOがCFRPに注力する理由は、繊維の配向や形状といった工夫の余地の大きさだ。軽量化や薄型化、それに伴う性能・機能面での付加価値の提供を高められるポテンシャルへの期待が高い。

 実は、今回のCFRPボディーは「VAIO史上で断トツのコストがかかっている」(同社)という。VAIO ZにおけるCFRPボディーの展開は、これまでにないレベルの挑戦だったという。短期的な収益よりも、中長期的なVAIOの未来を見据えた先行投資的な意義が大きそうだ。