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 ソニーグループは2021年6月10日、空撮ドローン「Airpeak S1」を発売した。20年11月に発表したドローンプロジェクトの第1弾製品で、映像制作に携わるクリエーターに向ける。同14日、Airpeakの開発を統括する同社執行役員AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏は、ドローン関連の展示会「Japan Drone2021」の会場で、報道陣の質問に答えた。以下は、同氏の発言要旨である。

ソニーグループが発売した空撮ドローン「Airpeak S1」と、開発を統括した同社執行役員AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏
ソニーグループが発売した空撮ドローン「Airpeak S1」と、開発を統括した同社執行役員AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏
S1の寸法は高さ約526.8mm×幅591.9mm×奥行き511.8mmで、重さは約3.1kg(バッテリーパックは除く)。最大積載可能重量は約2.5kgである。価格はオープン(市場推定価格で税込み110万円前後)。(写真:日経クロステック)
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 20年11月にプロジェクトを発表して以来、多くのクリーエーターの方々から賛同の声を頂いた。ソニーはこれまで業務用カメラや放送機材といった製品を手掛けてきた。それらは基本的に手に持って撮影するが、ドローンは彼らの撮影空間を広げるのに有効な手段であり、クリーエーターにとっての制約を取り払える。フルサイズミラーレス一眼カメラ「α(アルファ)」のためにドローンを開発したと言ってもいいだろう。

 確かに、ソニーがなぜドローン開発を手掛けるのかについて、社内では議論があった。既にホビー用などの空撮ドローンが数多く販売されており、技術がコモディティー化しているというような意見があった。しかし、ホビー用とプロのコンテンツクリエーター向けでは、ドローンに求められる技術レベルが明らかに違う。プロ向けは空力特性、安定性、推進力、重量とパワーのバランス、さらに量産品として安定供給できることが重要になる。これらの要素を実現できる企業は限られているため、現実に一部の会社が大きなシェアを占めている。だからこそ、ソニーが独自の技術でここに挑む価値があると考えた。

独自開発した17インチのプロペラ
独自開発した17インチのプロペラ
空力特性のシミュレーションなどを重ねて一から開発したという。(写真:日経クロステック)
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 Airpeak S1は、クリエーターのニーズに応えることを目的に、機体のメカ設計からソフトウエアまでを自社開発した。飛行性能、撮影性能、そして安全性の3つを兼ね備えることを重視した。そのためにAI(人工知能)、ロボティクス、センシング、イメージング、無線通信といった要素技術を組み合わせた。当社が保有する技術の出口の1つがドローンだ。

 飛行性能については、最高速度90km/h、最大角速度180°/s、最大傾斜角度55°を実現した。例えば、加速はホバリングから時速80kmに到達するのに3.5秒と機敏で、これによってダイナミックな映像を撮影できる。この性能を下支えしているのが、独自開発のプロペラとブラシレスモーター、ESC(Electric Speed Controller)だ。プロペラは低回転でモーターを回しても浮力を出せる空力特性を持つ。通常、ドローンを速く飛ばそうとすると高回転でモーターを回してしまうが、それだと機敏な動きができない。ゆっくりした状態からパワーをかけて一気に加速するのがポイントだ。

 耐風性も最大20m/sと高い。耐風性が高いということは安定して飛べるということ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の風洞実験施設で何回かテストをしたが、20m/sという強風下でも空中で静止できる。もちろん、自然界では一方向にしか風が吹かないということはあり得ないが、強風下でも機体をリアルタイムに制御できる。通常、小型の機体だと強風で吹き飛ばされてしまうが、そうした状況でも対応できる性能を担保したい。

 (ドローン市場では中国DJIが圧倒的なシェアを持つが)飛行性能に関しては独自の技術を投入して、上回るスペックを実現している。競争力のある商品だと考えている。ただし、ソニーとしては数(シェア)ではなく品質で勝負したい。