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商品データ提供に膨大な手間、「業務時間の1~2割」削減目指す

 J-MORAが担うのは「流通の過程で発生していた、情報のやり取りにかかる膨大な手作業の削減」(リテールAI研究会の今村修一郎テクニカルアドバイザー)だ。人手不足が深刻になる中で「情報の管理ややり取りから、より重要性が増す分析や活用にリソースを割ける意義は大きい」(同)とみる。

製配販の間で発生していた商品情報のやりとりのムダ削減を目指す
製配販の間で発生していた商品情報のやりとりのムダ削減を目指す
(撮影:日経クロステック)
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 現状、商品マスターは各企業が必要な情報を使いやすい形式で作成している。そのため、例えば小売企業が販促のためメーカーに商品名、商品画像、栄養素、お薦めのレシピなどを求めた場合、メーカー側は小売企業それぞれの要望や書式に合わせてデータを打ち込んで提供していた。

 「食品や日用品のメーカーの営業担当者では、小売りや卸との商品情報のやり取りに要する時間が業務時間の1~2割を占めるケースもある」(今村氏)という。

 小売りやメーカーの寡占化が進んでいる米国などに比べ、日本は地域密着型の小売りや地場の産品や技術を生かしたメーカーが数多く存在する。さらに両者間の取引を卸が仲介する独特の商習慣や、四季に合わせた新商品の発売・改廃も頻繁にあるため商品情報のやり取りも膨大になっている。

 商品情報の活用の幅が広がる期待もある。例えばメーカーでは、他社商品を含めた分析が容易になる。自社商品が他のどんなカテゴリーの商品と一緒に買われているかといった分析に、J-MORAからダウンロードした商品マスターを活用するといった形だ。従来、他社の膨大な商品マスターを作成・更新するのは現実的ではなかった。

 小売りでも、栄養素の情報を活用してECサイトで健康を切り口にしたフェアを開くなどの活用ができる。新型コロナ禍で消費者にはオンラインの購買行動が根付き、ネットスーパーなど小売事業者によるEC進出も加速している。商品を使ったレシピ提案や多言語対応など、店頭で求められる表示も増えている。「流通業界間で今までより迅速で正確な情報のやり取りができるなら理想的」(食品スーパー)と評価する声もある。