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 リコールはしない。罰金もなし──。ジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(Joyson Safety Systems Japan、以下、JSSJ)によるシートベルトの品質不正問題が、驚きの展開を見せた。2021年6月18日、同社はこの問題の調査結果を発表。法規違反の事実があったにもかかわらず、リコールによる自動車メーカーへの賠償金も、国への罰金の支払いも回避した。

試験データの改ざんが行われていたJSSJのシートベルト
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試験データの改ざんが行われていたJSSJのシートベルト
保安基準の法規にのっとっていなかったにもかかわらず、国交省から不問に付された。(JSSJのWebサイトの画像を基に日経クロステックが作成)

 この品質不正は、2020年4月末にあったJSSJの内部通報窓口への通報(内部告発)をきっかけに明るみに出た。その後、外部弁護士を含む調査委員会(以下、調査委員会)の調べにより、彦根製造所(滋賀県彦根市)と、JSSJのフィリピン子会社の事業所でそれぞれ966件と34件、合計1000件の試験データの改ざんが行われていたことが判明した。対象は、シートベルトのベルト部分であるウェビングに関する監査検査だ。

彦根製造所とフィリピン子会社による試験データの改ざん
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彦根製造所とフィリピン子会社による試験データの改ざん
(作成:日経クロステック)

 この監査検査では、品質が顧客の要求事項に適合しているか否かを確認する抜き取り試験を定期的に行う。その試験結果を「ウェビング検査月報」に転記する際に、「不合格の試験結果を合格の数値に書き換えていた」(同社)。改ざんしていた期間は、彦根製造所が20年(2000年1月~2020年1月)、フィリピン子会社の事業所は14年(2001年1月~2015年1月)である。

「リコール対象」と言っていた国交省

 不可解なのは、JSSJが法規を順守していない試験を実施していた事実が発覚したにもかかわらず、国土交通省から事実上の不問に付されたことだ。「シートベルトは法規で定められた安全機能部品であり、それを守らなければ販売できない」(シートベルトを手掛ける東海理化)はずなのに、である。

 事実、国交省はJSSJの品質不正が公表された2020年10月の時点でこう説明していた。「道路運送車両の保安基準の協定規則第16号(車両)に座席ベルトに関する試験が規定されている。そこに記された試験方法(手順)および安全基準(基準)を順守しなければ、保安基準を満たさないと判断される。もちろん、リコールの対象だ」(同省自動車局審査・リコール課)と。

 ある自動車メーカー出身者は「法規にのっとっていない試験を行っていたことが分かって、リコールにならなかったケースは聞いたことがない」と語る。また、ある自動車業界関係者は「通常であれば、クルマにおいて安全に関わる箇所で法規違反があれば、即リコールのはずだ。それが、法規違反があっても罰金すら科さないとは、国交省はどこを見て仕事をしているのか」と、ある自動車業界関係者はあきれる。

 一体、どういうことか。