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5項目で法規不合格

 JSSJによれば「法規不合格の書き換えは323件」(同社品質保証本部長の黒﨑亮氏)もあった。試験データを改ざんした1000件のうちの32.3%に相当する。具体的には、(1)耐摩耗性、(2)難燃性、(3)耐光性、(4)染色堅牢(けんろう)度、(5)仕事量の5項目について「日本の法規と一部海外の法規と照らし合わせて、法規上問題があった」(同氏)。このうち、日本の法規に違反した試験を行っていたのは、耐摩耗性と難燃性、耐光性の3つの項目だという。

試験データの改ざん件数のうち法規不合格だったものの割合
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試験データの改ざん件数のうち法規不合格だったものの割合
試験データを改ざんした全1000件のうち、323件で法規不合格のものが見つかった。法規不合格のものの中で、改ざんされた試験項目は5つある。これらのうち日本の法規で規定されているものは、耐摩耗性と難燃性、耐光性の3つ。(作成:日経クロステック)

 リコールを回避できた理由について、同社はこう語る。「今回の法規不合格のものに対し、品質の再検証を行った。個々の不合格結果の検証と、再試験を実施した場合はその結果の検証、試験の実施方法が正確だったか(否か)の検証、製造における最悪条件での検証、市場調査、である。それらの検証の結果、今回の(リコールしないという)結論に至った」(同氏)。ここで、JSSJがシートベルトを供給していた自動車メーカー12社の全社が「市場措置(リコール)は考えていないと聞いている」とJSSJ社長の岩満久好氏は付言した。

 自動車メーカーがリコールをしない理由について、ホンダは「JSSJからのデータや情報に加えて、社内の車両で検証した結果、1台の車両として見て問題がないと判断し、リコールは行わないと決定した」と説明。トヨタ自動車は「JSSJからデータを受けて社内検証を行った結果、車両の安全性への影響はないと認識しており、リコールを行う必要はないと判断した」との回答を寄せた。

試験データの改ざんについてオンライン会見を開いたJSSJ
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試験データの改ざんについてオンライン会見を開いたJSSJ
右は同社社長の岩満氏。(出所:日経クロステック)

国交省による不可解な説明

 確かに、部品の品質データが改ざんされていても、最終製品であるクルマで定められた安全性を満たしているのであれば、必ずしもリコールの必要はない。それは2017年に神戸製鋼所から始まった一連の「品質データ偽装問題」でも明らかになっている。だが、JSSJによるシートベルトの試験データの改ざんは、それらとは意味合いが異なる。先述の通り、シートベルトは保安基準の法規で試験の手順と基準が定められているからだ。この法規に該当する部品に関しては法規を順守しなければリコールになるというのが、自動車業界の「常識」とされてきた。

 この疑問について国交省に聞くと、次のような説明が返ってきた。

  • 「(不正があったのは)設計ではなく、製造上の品質管理での抜き取り検査におけるデータの書き換えだ。しかも、不合格は一部であり、全てが不合格ではない」
  • 「抜き取り検査で法規に定める基準値を満たしていなかった。これで不合格であっても、その理由を検証して再試験もできる。そこでJSSJは改ざんしたが、ばらつきが生じることも踏まえて、複数回試験するのはもともと許されている」
  • 「例えば、耐摩耗性の試験では棒(治具)をこすり合わせてウェビングを摩耗させる。この棒の表面に凹み(へこみ)があった。そのため、この凹みが当たってこすれた部分は想定以上の摩耗になり、引っ張り強さが劣化する。しかし、ちゃんとした棒を使えば、本来品質は確保できていた」

 まるで不正について言い訳する企業のような回答にも聞こえる。こうした主張で今回のJSSJの品質不正を不問に付すのであれば、今後は重大な問題が生じる恐れがあると言わざるを得ない。[1]法令順守の意識が薄れる、[2]法規の存在理由を失う、[3]不公平を生む、という3つの問題が考えられる。