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 IoTエッジ機器のPoC(Proof of Concept)や少量の量産には、ArduinoやRaspberry Pi(以下、ラズパイ)がよく使われている。どちらもマイコン搭載ボードに複数の周辺ボード、さらにソフトウエアを組み合わせて、機器の電子システムを構築できる。Arduinoやラズパイより、もっと小さくもっと簡単に組み立てることができるボードを研究開発する日本のプロジェクト「トリリオンノード・エンジン」が2021年3月に完了、商用化の動きが本格化した。

左側が研究開発プロジェクト「トリリオンノード・エンジン」の成果(Leafony仕様)に準拠したボード
左側が研究開発プロジェクト「トリリオンノード・エンジン」の成果(Leafony仕様)に準拠したボード
右側はArduinoのボード。どちらも5枚のボードを重ねた状態。東京大学とトリリオンノード研究会によれば、Leafonyは電池動作が可能なものが多い。一方、ArduinoはACアダプターを外付けすることが一般的だという。(出所:トリリオンノード研究会)
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 トリリオンノード・エンジンのプロジェクトはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業として16年度に始まった*。委託事業の成果であるボードなどの仕様は「Leafony」という名称で、19年9月に公開されている。委託事業の後に同プロジェクトはNEDOの助成事業となり、それが21年3月に完了した。助成事業の成果は21年5月から公開が始まった。助成事業の内容は委託事業に比べて実用的な色合いが濃く、商用化が本格化する。

* 関連記事 IoT市場はメイカーズの力で開拓せよ、トリリオン時代の開発・進化論
Leafonyの開発経緯
Leafonyの開発経緯
NEDO委託事業の研究開発プロジェクトとして2016年度に開始した。委託先は東京大学や東芝(その後、東芝デバイス&ストレージが引き継ぐ)など5機関。19年度からはNEDOの助成事業となり、21年3年に研究開発プロジェクトが完了し、商用利用に向けて本格的なスタートを切った。(出所:トリリオンノード研究会)
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 Leafonyは、Arduinoやラズパイよりも、小型で低消費電力化が図れることが特徴である。例えば、Arduinoのボードを5枚重ねた場合、約500cc、約300g、約200mWになるが、Leafonyのボードを5枚重ねた場合では約10cc、約20g、約20mW(動作時)/約50μW(待機時)で実現できるという。

Leafonyの特徴
Leafonyの特徴
Arduinoに比べて小さく、軽く、消費電力が低い。(出所:トリリオンノード研究会)
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 さらにLeafonyでは、ボード(「リーフ」と呼んでいる)間の接続が簡単という特徴もある。リーフの間に異方性導電ゴムを挟み込んで、電気的に接続する。その際、接続を安定させるためにはドライバーでねじ止めすればよく、マイクロコネクターやはんだ接続は不要である。「複数のリーフを組み合わせたサブシステムやシステムが簡単に構築できる」(東京大学名誉教授で、トリリオンノード研究会代表の桜井貴康氏)。

異方性導電ゴムを使ってリーフ間を接続する
異方性導電ゴムを使ってリーフ間を接続する
はんだ付け不要で、接合部の高さが2mmと低背。(出所:トリリオンノード研究会)
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ドライバーでねじ止めすることでリーフ間の接合を安定させる
ドライバーでねじ止めすることでリーフ間の接合を安定させる
(出所:トリリオンノード研究会)
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 Leafonyの仕様は、トリリオンノード研究会 ホームページ が権利を持つが、オープンであり、基本的に誰でもLeafony仕様準拠のリーフを作ったり、販売したりできる(ライセンスについては後述)。この点はArduinoやラズパイと同じである。ただし、先行するArduinoやラズパイでは、マイコン向けのオープンなソフトウエアがすでに多数ある。トリリオンノード研究会でも幾つかのオープンなソフトウエアを用意しているが、Arduino向けのソフトウエアを流用できるようにして、ユーザーの開発負荷の低減を図っている。「Leafonyリーフのマイコン向けのソフトウエア開発環境では、Arduino互換のソフトウエアの読み込みと編集が可能で、アプリケーションソフトウエアを容易に開発できる」(桜井氏)。なお、トリリオンノード研究会には、東大や東芝デバイス&ストレージなど、日本の企業と大学が参加しており、記事執筆時点のメンバー数は56である 参加団体一覧

ソフトウエア開発環境を用意
ソフトウエア開発環境を用意
Arduino向けのソフトウエアを流用できるようにしている。(出所:トリリオンノード研究会)
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