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 みずほ銀行は2021年7月1日付で、日本IBM出身の林勇太氏を「IT・システムグループ副グループ長」に招く。林氏は2019年7月に全面稼働した勘定系システム「MINORI」の開発に、ベンダー担当者として2010年から関与してきた。MINORIを熟知する林氏が、大規模システム障害の再発防止策を担う格好だ。

 2021年7月1日からみずほFGとみずほ銀行はIT系幹部を6人に増やす。具体的にはみずほFGとみずほ銀のそれぞれのIT・システムグループに、グループ長(CIO=最高情報責任者)を兼ねる幹部を2人、副グループ長を兼ねる幹部を置く。さらに、みずほ銀行だけのIT・システムグループ副グループ長を務める林氏が加わる。みずほFGの坂井辰史社長は2021年6月15日の記者会見で、副グループ長を「副CIO」と表現した。

みずほフィナンシャルグループ/みずほ銀行におけるIT・システムグループの幹部体制
FG:みずほフィナンシャルグループ、BK:みずほ銀行、MHRT:みずほリサーチ&テクノロジーズ(出所:みずほフィナンシャルグループとみずほ銀行の資料を基に日経クロステック作成)
役割名前肩書
(2021年7月1日以降)
現職
FGグループ長、BKグループ長石井哲FG執行役、BK副頭取執行役員同左
FG共同グループ長、BK共同グループ長米井公治FG執行役、BK副頭取執行役員MIデジタルサービス代表取締役副社長
FG副グループ長、BK副グループ長片野健FGグループ執行役員、BK常務執行役員同左
FG副グループ長兼IT・システム企画部長、BK副グループ長兼IT・システム企画部長山口和哉FG執行理事、BK執行理事FG/BK IT・システム企画部長
BK副グループ長林勇太BK執行理事日本IBM理事
FG副グループ長向井 康眞FGグループ執行役員、MHRT取締役副社長同左

 現時点でIT・システムグループのグループ長は1人、副グループ長は2人だ。2002年、2011年に続き、2021年2~3月に3回目の大規模システム障害を起こしたみずほFGは、システム障害の再発防止策を講じるため、IT・システムグループの幹部を2021年7月1日付で増員。その結果、このような他に類を見ない幹部構成になる。

 2021年2~3月に大規模システム障害が発生した際、みずほFGとみずほ銀行のIT・システムグループ長を兼務していた石井哲氏は事務グループ長の兼任で、2019年4月にCIOに就任するまでは営業統括や人事グループ長を歴任していた。システム開発や運用の経験が乏しい石井氏を補佐するため、IT部門のベテランやITベンダーの出身者を幹部に据えた。

 2021年7月1日付で共同CIOに就任する米井公治氏は、現在はシステム運用会社であるMIデジタルサービス(MIDS)の副社長だが、それ以前はみずほFGとみずほ銀行のIT・システムグループ副グループ長などの立場でMINORIの開発を長くけん引してきた。林氏以外のIT・システムグループ副グループ長としては、現在も副グループ長を務める片野健氏と情報システム子会社であるみずほリサーチ&テクノロジーズ(MHRT、みずほ情報総研とみずほ総合研究所が2021年4月1日に統合)の向井康眞副社長がいるほか、2021年7月1日付で山口和哉IT・システム企画部長が副グループ長に昇格する。

 金融機関の副CIOに開発ベンダーの出身者が就任するのは異例だが、みずほFGのグループ内事情を考えると納得がいく。みずほFGは2020年7月にシステム運用部門をMIDSとして分離し、日本IBMの子会社としていたからだ。MIDSの出資比率は日本IBMが65%、みずほFGが35%である。

システム子会社と運用会社が連携できず

 機能別に事業会社を設けるみずほFGだが、2021年2~3月に発生した大規模システム障害ではそれらの連携がうまく行っていなかった。具体的には、運用の責任を負うみずほ銀行と、実際の運用業務を担うMHRT(障害発生当時はみずほ情報総研が運用を担当)、そしてデータセンターにおける実作業などをみずほ銀行から委託されたMIDSの連携にまずさがあった。

 例として、ATMに通帳やキャッシュカードが飲み込まれるトラブルが5244件発生した2021年2月28日のシステム障害における連携体制を見てみよう。このシステム障害は、1年以上記帳がない定期預金の口座約45万件を、通帳を発行しない「みずほe-口座」に一括して切り替える処理で発生した。

 e-口座への「一括切替処理」に際してMHRTがMIDSに出した指示書「特別作業依頼書」では、バッチ処理(センター集中記帳処理)の間は、MHRTがエラー発生状況などを監視するため、MIDSの対応は不要としていた。しかし実際には、MHRTにはエラーを監視する能力はなかった。MINORIのエラーログの内容を分析して「エラー出力場所」や「対応優先度」などを自動的に判定する「統合運用基盤システム」はMIDSだけが利用できたのに対して、MHRTは「生」のエラーログを運用担当者がオフィスにある端末で直接参照する必要があった。

 システム障害が生じ始めた2021年2月28日午前10時、MIDSのオペレーターは統合運用基盤システムが発するアラートに気づき、決められた運用マニュアルに従ってMHRTの担当部門に電話で口頭連絡した。しかしMHRTの担当者はエラーログを分析するには東京臨海高速鉄道・りんかい線品川シーサイド駅そばにあるMHRTのオフィスに出社しなければならず、エラー発生状況を分析し出したのは午後2時と遅れた。しかもエラーログは人が1件ごと確認する必要があり、ATMトラブルの原因特定にはそこから3時間以上を要した。