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 他にもシステム障害の前日である2021年2月27日に発生していた重要なシステムアラートを、MIDSがMHRTに伝えていないなど、両社の連携には問題があった。MIDSでは土曜日である2月27日に生じたアラートについて、翌営業日である3月1日月曜日に電話でMHRTに伝える取り決めになっていたためである。

 今後はみずほ銀行とMHRT、MIDSの連携を改善する必要がある。そのためにMIDSの副社長を務めていた米井氏を共同CIOとしてみずほ銀行本体に復帰させ、MIDSに65%を出資する日本IBMの林氏を副CIOに迎え入れたわけだ。

主要4ベンダーによる「アドバイザリーデスク」が復活

 林氏当人に適性があるのは間違いない。冒頭で述べたように、林氏はMINORIの開発に2010年から関わってきた。みずほFGは2011年に起こったシステム障害をきっかけにMINORIの開発を始めたとされるケースもあるが、それは正確ではない。

 実はみずほFGが、旧みずほ銀行、旧みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行の3つの勘定系システムを1つの新しい勘定系システムに統合するプロジェクトを始めたのは2004年まで遡る。2010年から新しい勘定系システムを日本IBMのメインフレーム上に構築する作業を本格的に始め、このとき林氏は、全ての口座情報や顧客情報を取り扱う「CIF(カスタマー・インフォメーション・ファイル)」のプロジェクトマネジャーとして、後にMINORIと呼ばれる新しい勘定系システムの開発に参画した。

 みずほFGはMINORIの主な開発について、日本IBMに加えて富士通、日立製作所、NTTデータの4社に分割発注した。これら「主要4ベンダー」はMINORIの開発初期である2012年12月に、新勘定系システムのアーキテクチャーや実装方針を議論する「技術アドバイザリーデスク」を組織し、週3回のペースで議論を重ね、みずほ銀行やMHRT(当時はみずほ情報総研)に対してシステム開発の方向性をアドバイスした。林氏はそのメンバーであり、MINORIの全体像を把握する立場にもあったわけだ。

2019年8月の取材に応じたMINORI開発に携わった主要4ベンダー(右から2人目が日本IBMの林勇太氏)
2019年8月の取材に応じたMINORI開発に携わった主要4ベンダー(右から2人目が日本IBMの林勇太氏)
(撮影:日経クロステック)
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 みずほFGは2021年6月15日に発表したシステム障害の再発防止策に、技術アドバイザリーデスクの復活を盛り込んだ。再発防止策はMINORIの開発と同様に、主要4ベンダーの「監修」の下、進むことになった。元の技術アドバイザリーデスクのメンバーだった林氏は、主要4ベンダーとのつなぎ役としても適任と言える。

 2021年2~3月の大規模システム障害によって、みずほ銀行は勘定系システムを刷新しても、「危機事象に対応する組織力の弱さ」「ITシステム統制力の弱さ」「顧客目線の弱さ」といった組織の問題を払拭できていなかった実態が明らかになった。外部人材の登用はあくまできっかけにすぎない。みずほFG、みずほ銀行自身の変革力が問われている。