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AIが売価を決めて食品・割引ロスを削減

 食品流通ならではの課題の解決にも取り組む。総菜や牛乳などの日持ちのしない商品は、廃棄ロスや値引きによるロスのリスクがつきまとう。イオンリテールはこうしたロス削減にもAIの活用を始めた。

 具体的には日本IBMの協力を得て、売価分析システム「AIカカク」を開発、イオンスタイル川口に導入した。AIカカクには過去3年分の単品ごとの売価や販売時間帯といった販売実績と天候や客数などの環境条件を学習させた。従業員が商品バーコードと売り場の在庫数を端末に入力すると、閉店までに売り切れる適切な売価を導き出して割引シールを発行する仕組みだ。

AIが廃棄・値引きロスを最小限に抑える売価を導き出す
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AIが廃棄・値引きロスを最小限に抑える売価を導き出す
撮影:日経クロステック

 2020年11月に先行導入した店舗の総菜部門で活用したところ、値引き額を2割圧縮できた。「データの蓄積が進めば、廃棄ロスも半分以下にできる見通しだ」(山本執行役員)。1円単位の売価設定でしのぎを削る食品スーパーにあって、廃棄に起因するコストを減らして目玉商品の値下げ原資やさらなるDX投資に向けられる意義は大きい。

 イオンリテールはイオンスタイル川口を皮切りに、スマートストアの展開を加速する。2021年7月までにほぼ全店にあたる約350店にAIカカクを導入。2022年2月期中に全国の約80店にAIカメラを導入する。小売りの巨艦がリアル店舗から得られる購買行動データの活用に本格的に乗り出すことを意味する。

 リアル店舗で得られるデータには国内外のEC大手も高い関心を寄せる。楽天グループは西友と共同でネットスーパーを運営しており、2021年3月1日までに西友に2割出資した。米国では米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が自らリアル店舗を出店している。イオンのスマートストア戦略は単なる効率化や経費削減にとどまらず、リアルとネットの垣根を越えた小売り大手の競争激化に備えた布石としての意味合いも大きい。