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 遠くの大病院まで行かなくても、最寄りの病院で専門治療が受けられる――。そんな医療の仕組みづくりにスタートアップが取り組んでいる。地方の主治医が離れた場所にいる専門医とオンラインで資料を共有しながら診察を進められるようになる。患者の負担が減ることはもちろん、地域医療の健全化につながる可能性も秘める。

 医療スタートアップのアルム(東京・渋谷)は広島大学・札幌医科大学と組んで、てんかん診療に関する共同研究を始めることを2021年5月24日発表した。アルムが展開する医療関係者間のコミュニケーションアプリ「Join」を活用し、連携施設の医師とてんかんの専門医をつなぐことで、地域におけるてんかん診断技術が向上するかを検証する。

 てんかんの患者は日本に約80万人いるとされる。てんかんは症状が多様で、正確な診断には脳波の検査が必要だ。しかし脳波データを基に診断できる専門医は日本に700人程度しかおらず、適切な診断をすぐに受けられないといった課題が指摘されていた。

てんかんの疑いのある患者の脳波の動画データをクラウドで共有する
てんかんの疑いのある患者の脳波の動画データをクラウドで共有する
(出所:アルム)
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 共同研究の開始に伴い、Joinの機能の中に脳波ビューワーを実装した。脳波データを動画としてJoinのプラットフォーム上で共有でき、専門医はパソコンやスマートフォンのJoinアプリを通じて場所や時間を問わずに脳波判読ができるようになる。これまではCDなどの記録媒体にデータを保存して郵送する必要があったため、送る側の作業負担や診断までのタイムロスが課題だった。アルムによると、クラウドベースで脳波データをリアルタイムで共有する取り組みは日本で初めてだという。

 広島大学はヒロシマ平松病院と広島中央健診所との間でこの仕組みを活用し、2024年10月31日まで研究を続ける。外来患者の脳波検査だけでなく、入院時の長時間ビデオ脳波モニタリングの遠隔診断にも応用するという。また、認知症と診断された患者の中にはてんかんの患者が紛れている可能性が指摘されており、広島大学は共同研究をこうした認知症患者のスクリーニングにもつなげていく考えだ。札幌医科大学は函館新都市病院との間で、2022年3月31日まで主に外来脳波検査に関する検証を行う。