全2758文字
PR

 「本稼働後も素早くPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回せる。それが自前でシステムを開発した強みだ」――。常石造船(広島県福山市)の設計本部機電設計部で部長を務める小林裕氏は、2021年6月に本格運用を始めた、設計業務で使うワークフローシステムを内製した利点をこう語る。

常石造船の小林裕設計本部機電設計部部長
[画像のクリックで拡大表示]
常石造船の小林裕設計本部機電設計部部長
(出所:常石造船)

 同社は広島県などを拠点に、船舶の建造と修繕事業を手掛けている。主力製品は世界トップシェアを持つ載貨重量8万2000トン級のばら積み貨物船などだ。中国企業や韓国企業などとの競争激化で変革が求められるようになり、設計本部はワークフローシステムの導入による業務改善に取り組むこととした。

 着目したのはコードを極力もしくは全く書かずにアプリケーションを開発する「ローコード/ノーコード開発」。ノーコード/ローコードの開発環境と実行基盤をクラウドサービスで提供するドリーム・アーツ(東京・渋谷)の「SmartDB(スマートデービー)」を使って、設計業務における作業の進捗や設計図面の管理を効率化する新システムを開発した。設計本部の約250人が使っている。

 新システムの特徴は設計部門自らが開発した点だ。情報システム部門と連携・情報共有しつつ、導入プロジェクトを立ち上げてワークフローの設計からアプリケーションの実装までやり遂げた。メールベースだった業務をワークフローで進めるようにしたことで、年間1万3000時間分の作業時間削減を見込む。

常石造船が導入した設計業務向けのワークフローシステム
[画像のクリックで拡大表示]
常石造船が導入した設計業務向けのワークフローシステム
[画像のクリックで拡大表示]
常石造船が導入した設計業務向けのワークフローシステム
(出所:常石造船)

 常石造船ではこれまで3次元CAD(コンピューターによる設計)を導入するなど、設計業務のデジタル化に取り組んできた。ただ、紙の書類を使った業務が少なからず残っていた。例えば工場の作業現場に渡す製作図などを設計本部内で確認・承認するプロセスは、ほぼ紙ベースで進めていた。加えて設計本部の8グループ、具体的には船殻や艤装(ぎそう)、配管、電気の設計・開発などのグループごとに、確認や承認といった手続きのワークフローがばらばらだった。

新型コロナ禍による電子化でトラブル発生

 デジタル化をさらに進めるため、常石造船は2020年1月に業務プロセスの改善に向けた3カ年計画を立案。しかし、その矢先に新型コロナ禍に見舞われ、設計本部は紙ベースの業務を電子化する案件に前倒しで取り組むこととした。小林部長はその背景を「(BCP:事業継続計画の対策として)設計部隊を3つの拠点や在宅勤務に分散して勤務させるとともに、紙ベースの業務をなくすことで従業員同士の接触機会を減らすことに取り組んだ」と語る。2020年春から順次、紙の図面や帳票はPDFやExcelに、それらの確認や承認などのやりとりをメールやファイルサーバー、電子印鑑などに置き換えた。

 ところが、急ぎ進めたこの電子化が混乱を招いた。当初の計画では、設計本部内での業務プロセスを洗い出し、統一したワークフローを整備してから電子化を進める予定だったが、新型コロナ禍で既存の仕事のやり方を電子化したため、各グループのワークフローはばらばらのままだった。電子化した書類をメールでやりとりするグループもあれば、ファイルサーバーで管理するグループもあったため、確認や承認などが円滑に進まず、「メールの見落としや誤操作によるデータ紛失など、業務に悪影響を及ぼす問題が立て続けに発生した」(小林部長)。