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 政府のIT発注で競争入札が機能していない実態が明らかになった。会計検査院は2021年5月26日、中央官庁が2018年度(2019年3月期)に実施した情報システムの調達について分析検査した結果を公表した。競争入札となった契約案件のうち、実に73.9%(契約件数ベース)が1事業者しか参加しない「1者応札」だった。

 そもそも政府のIT発注は、契約金額が大きくなるほど随意契約の割合が高い傾向が続いている。限られた競争入札でさえ1者応札が7割を超え、実質的に競争が働いていない実態は、契約金額の高止まりを招いている。会計検査院によると、競争入札で予定価格に対する契約金額の比率(落札率)は、1者応札の契約では96.0%と、予定価格に極めて近かった。これは2者以上が入札した契約の82.5%よりも13.5ポイント高い。

会計検査院がまとめた2018年度における政府IT調達の現状。競争入札が半数強を占めるが、競争入札の実に7割が「1者応札」であり、競争が生じていないことになる
会計検査院がまとめた2018年度における政府IT調達の現状。競争入札が半数強を占めるが、競争入札の実に7割が「1者応札」であり、競争が生じていないことになる
(出所:会計検査院)
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 政府IT発注で競争入札が進まず、システムごとに契約ベンダーが固定化している現状は、公正取引委員会も警戒を強めている。ベンダーによる「囲い込み」の実態を把握するため、公取委は2021年6月初めから官公庁や自治体など約1800の行政機関に書面調査票を送り、調査に着手した。

 日経クロステックは、会計検査院が検査した2018年度における予算額上位の大型政府システムの契約状況を公開情報からまとめた。契約金額が大きくなるほど1者応札が増え、競争入札が機能していない実態が分かった。

大型案件では機能追加も随意契約

 会計検査院が公表した検査報告書「政府情報システムに関する会計検査の結果について」によると、2018年度における年間予算額上位10システムの合計予算額は3316億8671万8000円だった。これは年間約7000億円とされる政府IT予算の半分弱を占める。

2018年度における年間予算額上位10システムの概要
(出所:会計検査院の資料と各省庁の開示情報を基に日経クロステック作成)
発注元省庁システム名年間予算額うち整備(開発)費うち運用費主な契約ベンダー
厚生労働省記録管理・基礎年金番号管理システム878億5876万円389億6573万円488億9302万円NTTデータ、日立製作所
厚生労働省ハローワークシステム619億7357万円214億5027万円405億2330万円富士通
厚生労働省年金給付システム385億9362万円86億1277万円299億8085万円日立製作所
特許庁特許事務システム332億9132万円166億2966万円166億6166万円NTTデータ、東芝デジタルソリューションズ、日立製作所、富士通
国税庁国税総合管理システム(KSKシステム)280億8476万円18億5853万円262億2624万円日立製作所、文祥堂
法務省登記情報システム227億1817万円64億0022万円163億1795万円富士通
総務省政府共通プラットフォーム158億3477万円6億3216万円152億0261万円NTTデータ
法務省出入国管理システム154億6142万円58億9829万円95億6313万円日立製作所、NEC
国土交通省管制情報処理システム139億8178万円103億3520万円36億4658万円NTTデータ、NEC
厚生労働省労働基準行政システム138億8856万円37億7931万円101億0925万円NTTデータ

 個別に見ると、年間予算額が最も多かったのは年金業務に使う「記録管理・基礎年金番号管理システム(年金記録系システム)」で、878億5875万6000円だった。2位が労働行政に使う「ハローワークシステム」、3位がもう1つの年金業務システムである「年金給付システム」だった。

 上位3システムはいずれも厚生労働省が所管する。第4位は特許庁の「特許事務システム」。5位は国税庁の「国税総合管理(KSK)システム」、6位は法務省の「登記情報システム」と続く。

 上位システムの契約状況を調べると、案件の予算額が大きくなるほど、競争入札が減って随意契約が増える傾向が見えてくる。会計検査院によると、2018年度における競争入札の割合(契約件数ベース)は56.0%と過半に達していた。

 しかし、年間予算額トップの年金記録系システムと3位の年金給付システムの2つは、官報に基づく厚労省の公開情報ではシステム開発関連の契約は全て随意契約だった。主な契約相手はNTTデータと日立製作所である。

 厚労省も「2018年度に一般競争入札は実施していない」と認める。上位の他システムについては、例えば4位の特許事務システムは件数ベースで競争入札が2割強にとどまるなど、一般競争入札の割合は全体平均を大きく下回る。