リコール総数が1100万台を突破──。デンソー製欠陥燃料ポンプのリコールの拡大がなおも止まらない。2021年6月24日、ダイハツ工業が約96万台のリコールを日本で届け出た。このリコールの原因も、品質不具合を抱えたデンソー製燃料ポンプであることが自動車業界関係者への取材で判明した。これにより、同社製燃料ポンプの品質不具合が原因のリコール総数は、世界で約1109万台にまで膨らんだ。
対象は、「タント」「ムーヴ」「ムーヴキャンバス」「ミライース」など21車種の軽自動車だ。リコールの原因は、低圧燃料ポンプの樹脂製インペラ(羽根車)にある。このインペラが燃料であるガソリンを含んで膨潤し、ポンプケースと接触して作動不良を起こす。最悪の場合、走行中にエンジンが停止する恐れがある。
ダイハツ工業が被る負担は大きい。同社はトヨタ自動車など他社へのOEM(相手先ブランドによる生産)分を含めて、年間生産台数は約170万台(実力値。新型コロナウイルス禍の影響を除く)である。従って、今回の95万6221台のリコールは、年間生産の約56%分を占める規模となる。国内の自社ブランド車(ダイハツ車)に限ればさらに影響は大きい。国内のダイハツ車の年間生産台数は約60万台だから、今回のリコールはその約1.6倍もの規模だ。事実、同社にとって「過去2番目の規模」(ダイハツ工業)のリコールとなる。
目を引くのは、ダイハツ工業がリコールを届け出るまでに時間がかかっていることだ。品質問題に詳しいある自動車メーカー出身者(以下、品質の専門家)は「異常なまでの遅さ」と表現する。
短期間に不具合が多発
というのも、今回のリコール対象車の製造期間は約1年10カ月(17年7月3日~19年5月8日)と比較的短いのに対し、市場から上がってきた不具合件数は584件もあるからだ。
しかも、デンソー製燃料ポンプが原因のリコールは20年1月に米国で報告され、同年3月には日本でも発生している。従って、少なくともその時点で、ダイハツ工業はデンソーから燃料ポンプの品質不具合に関する情報を得ているはずだ。さらに言えば、20年3月には親会社であるトヨタ自動車が300万台を超えるリコールを発表し、自動車業界を騒がせる大問題に発展しているのである。ダイハツ工業がデンソー製燃料ポンプの潜在的な品質不具合リスクを知らなかったはずはない。
「通常は、市場から上がってくる不具合件数が1桁の段階でリコールか否かを判断する。それが難しい案件でも20~30件程度で手を打つ。業界でこれだけ問題になっている案件で、約1年10カ月で584件もの不具合件数が積み上がっていくのにまかせたというのは、ダイハツ工業の品質保証の対応に首をひねらざるを得ない」(品質の専門家)。
ダイハツ工業は一体、何をしていたのか。