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 大成建設と国立国際医療研究センター(NCGM)は2021年6月、集中治療室(ICU)で使う医療機器をロボットで遠隔から操作するシステムを開発したと発表した。新型コロナウイルス感染症などの患者をICUで治療する際に、医療従事者の感染リスクを減らす。今後システムを改良し、病院への提供を検討する。

専用の架台にロボットとシリンジポンプを設置した
専用の架台にロボットとシリンジポンプを設置した
(出所:大成建設)
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 NCGMが有する国際医療研究センター病院は全国に数カ所しかない特定感染症指定医療機関に指定されており、エボラ出血熱などといった危険性の高い1類感染症の患者を受け入れる役割を担う。「将来的に新たな感染症が発生し、個室での治療対応が必要になる場合にも開発したロボットシステムは有用だろう」と国際医療研究センター病院 集中治療科 診療科長の岡本竜哉氏は期待する。

 開発したシステムは、デンソーの産業用人協働ロボット「COBOTTA」を利用している。遠隔からロボットを操作することで、薬剤を投与する医療機器「シリンジポンプ」の動作を調整できるようにした。医療従事者が操作を始めると、まずはロボットハンドがあらかじめ設定したプログラムに従い、ロボットと同じ架台に設置されたシリンジポンプまで自動で移動していく。その後、医療従事者がウェブカメラの映像や音を確認しながらロボットを遠隔操作し、シリンジポンプのボタンを押して稼働を止めたり、ダイヤルを回して投与量を変更したりする。

ロボットを操作してシリンジポンプのボタンを押す様子
ロボットを操作してシリンジポンプのボタンを押す様子
(出所:大成建設)
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 ウェブカメラがシリンジポンプの操作音と警告音を拾うため、遠隔にいる医療従事者は現場で実施する場合と同様の感覚で制御を実施できるという。また、誤作動を防止する仕組みもある。一定の投与量以上は設定できないようにしたほか、ロボットハンドにエアシリンダーを内蔵し、万が一操作中に停電した場合はエアシリンダーの空気が抜けることで、ロボットハンドがボタンから離れる。

 国際医療研究センター病院で実証実験を実施し、開発したシステムで遠隔からシリンジポンプの操作が可能であることを確認した。今後は実導入を見据えてシステムの改良を進める。用途も新型コロナの治療以外に広げていく考えだ。「例えば放射線治療中のシリンジポンプの制御にも利用できるのではないかといった案がでている」(大成建設エンジニアリング本部エンジニアリングソリューション部スマートファシリティソリューション室の藤原友莉子氏)。