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 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、NTT、NTTドコモ、インテルは2021年7月1日、東京2020大会における5G(第5世代移動通信システム)を活用するショーケースの概要を明らかにした。大会期間中、3つの競技会場で「TOKYO 2020 5G PROJECT」を実施。新たなスポーツ観戦体験の提供を試みる。

 同プロジェクトには、NTT、NTTドコモ、インテルが技術面で協力。また、NHK(日本放送協会)と日本民間放送連盟も協力者に名を連ねている。

 江の島ヨットハーバー(神奈川県藤沢市)を会場とするセーリング競技では、超高臨場感通信技術を導入。21年7月25日から8月4日までの期間(予定)、観客席を対象に実施する。

 これまでセーリング競技に関しては、双眼鏡を使うなどして防波堤から観戦するしかなかった。今回、洋上に幅50m級のワイドビジョンを設置。NTTが開発に取り組んできた超ワイド映像合成技術「Kirari!」を導入し、競技間近で撮影した映像を離れた場所にあるワイドビジョンに伝送する。ライブ通信により、横方向12K解像度の映像を映し出す。

セーリング競技における5Gプロジェクト。洋上に浮かべるワイドビジョンのイメージ。NTTは、「競技コース間近に停泊したクルーズ船の特等席から観戦しているかのような体験」と説明している(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTT)
セーリング競技における5Gプロジェクト。洋上に浮かべるワイドビジョンのイメージ。NTTは、「競技コース間近に停泊したクルーズ船の特等席から観戦しているかのような体験」と説明している(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTT)
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競技会場となる江の島ヨットハーバー(写真:Tokyo 2020)
競技会場となる江の島ヨットハーバー(写真:Tokyo 2020)
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 現地における観戦体験の質の向上のみならず、コロナ禍などのために来場できない人々に、現地観戦に近い臨場感と一体感を安心・安全に提供するサービスにもなり得る、と説明。「NTTが進めるリモートワールド(分散型社会)を具現化する取り組み」としている。

今回プロジェクトに導入するNTTの超ワイド映像合成技術「Kirari!」の技術説明図。単一のカメラでは撮影できないワイド映像を生成するために、複数台の4Kカメラを搭載したボートやドローンを使って競技を撮影。4K映像を3つ並べた横方向12K解像度の超ワイド映像としてリアルタイムに合成する(資料:NTT)
今回プロジェクトに導入するNTTの超ワイド映像合成技術「Kirari!」の技術説明図。単一のカメラでは撮影できないワイド映像を生成するために、複数台の4Kカメラを搭載したボートやドローンを使って競技を撮影。4K映像を3つ並べた横方向12K解像度の超ワイド映像としてリアルタイムに合成する(資料:NTT)
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今回プロジェクトのシステム構成図。12K映像を観戦者の目の前のワイドビジョンにライブ伝送する。5G、Kirari!の他、ドローンとドローン母船間の安定した通信を実現するための位置測定技術(Real Time Kinematic)、映像データがばらばらに到着しても崩れないようにする超高臨場感メディア同期技術(Advanced MMT)などを組み合わせて用いる(資料:NTT)
今回プロジェクトのシステム構成図。12K映像を観戦者の目の前のワイドビジョンにライブ伝送する。5G、Kirari!の他、ドローンとドローン母船間の安定した通信を実現するための位置測定技術(Real Time Kinematic)、映像データがばらばらに到着しても崩れないようにする超高臨場感メディア同期技術(Advanced MMT)などを組み合わせて用いる(資料:NTT)
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 また、同競技の映像は、メインプレスセンターとなる東京ビッグサイト(東京・江東)にも伝送される。行動を制約される可能性のある各国メディア関係者にも、超高臨場感を体験してもらうという。

東京ビッグサイトのメインプレスセンターに設置するワイドビジョンのイメージ(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTT)
東京ビッグサイトのメインプレスセンターに設置するワイドビジョンのイメージ(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTT)
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100分の1秒を競う競技でリアルタイムAR

 東京アクアティクスセンター(東京・江東)を会場とする競泳では、AR(拡張現実)を導入。21年7月25日から27日まで、および8月27日から29日までの期間(予定)、一部関係者席を対象に実施する。

競泳における5Gプロジェクト。ARデバイスによるサービスのイメージ(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTTドコモ)
競泳における5Gプロジェクト。ARデバイスによるサービスのイメージ(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTTドコモ)
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19年11月に内部が初公開された際(内装工事中)の東京アクアティクスセンター(写真:日経クロステック)
19年11月に内部が初公開された際(内装工事中)の東京アクアティクスセンター(写真:日経クロステック)
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競泳を対象とする5Gプロジェクトのシステム構成図(資料:NTTドコモ)
競泳を対象とする5Gプロジェクトのシステム構成図(資料:NTTドコモ)
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 同会場では5Gの低遅延性を生かし、観戦者の装着するARデバイスにリアルタイムで競技データを配信。観戦者の視界では、現実の競技に重なるように、選手紹介やタイムなどのデータが表示される。これまで、100分の1秒を競う競技に合わせたデータのリアルタイム表示は難しかった。5Gの活用で、会場の雰囲気に浸りながら、詳しい競技情報を取得できるようになる。

 霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)を会場とするゴルフ競技では、マルチライブ中継を試みる。21年7月31日から8月1日まで、および8月6日から7日までの期間(予定)、ファンゾーンを対象に実施する。

ゴルフ競技における5Gプロジェクト。マルチライブ中継によるサービスのイメージ(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTTドコモ)
ゴルフ競技における5Gプロジェクト。マルチライブ中継によるサービスのイメージ(資料:Tokyo 2020、画像作成協力:NTTドコモ)
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今回プロジェクトのシステム構成図(資料:NTTドコモ)
今回プロジェクトのシステム構成図(資料:NTTドコモ)
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 離れた場所で展開される複数の競技映像を、手元のデバイスで切り替えながら観戦できる。ゴルフ競技の観戦には、ある競技を定点観測したり、好きな選手を追い掛けたりなど、人それぞれのスタイルがある。同会場では、複数の競技映像や参加選手の詳細なスコアなど大容量データを5Gで伝送。自由かつリアルタイムに画面を選択し、ストレスを感じずに楽しむことができるようにする。