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 2021年4月1日に社名を「富士ゼロックス」から変更した富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)。世界的な知名度を誇る「ゼロックス」ブランドのライセンス契約は同年3月末で終了した。富士フイルムBIとしては、機能面などでこれまで以上に訴求力のある製品を市場に送り出し、新たなブランドを育てることが求められている。

 そんな同社が社名変更と同時に発表した新製品がA4カラープリンター「ApeosPrint C320 dw」とA4カラー複合機「Apeos C320 z」だ。いずれも店舗の窓口など狭い場所に設置したいという消費者のニーズに応え、従来機から体積を4割減らした。「同クラスでは世界最小・最軽量*1」(同社)という。

*1 カラー、モノクロ毎分連続プリント速度30枚以上(A4片面)のA4カラープリンター/複合機の本体体積において。質量は消耗品なしの場合。21年3月時点の富士フイルムビジネスイノベーションの調査に基づく。
新発売したプリンター「ApeosPrint C320 dw」
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新発売したプリンター「ApeosPrint C320 dw」
大きさは幅410×奥行き430×高さ255mm。A4サイズの同一原稿を連続で印刷する場合、カラー、モノクロともに毎分31枚のプリントが可能。 (出所:富士フイルムビジネスイノベーション)

精鋭10人ですり合わせを極める

 プリンター・複合機は、トナーを半導体の一種である感光体に付着させる「現像」や、感光体に乗ったトナーを紙へ移す「転写」、紙が途中で詰まらないように送る「紙送り」など、機械や光学、化学など幅広い様々な技術の組み合わせで成り立っている。

 新製品も、そうした基本技術や動作原理という点では従来製品と大きな違いはない。ではなぜ4割も小型化できたのか。鍵は、18年に始まった「ゲームチェンジモデル」の開発にあった。現会長の玉井光一氏(当時は社長)が仕掛け人となって始まったプロジェクトだ。

 同氏はゲームチェンジモデルとして、従来製品とは一線を画す「世界初」の特徴を持つ複合機の実現を目指した。そこで、現像、転写、紙送りなど各分野から精鋭技術者を10人ほど集めて開発を始めた。

 その際に掲げた開発目標が「小型化」だった。政府機関や金融機関、小売店など、業務で使用するプリンターや複合機に対して、利用者から高さを抑えた製品を求める声が上がっていたためである。目指したのは、カウンターの上に載せて使ったり、本棚やラックの中に設置したりできる、高さ250mm程度の製品。そこで開発の初期段階から、技術分野を越えたすり合わせ式の開発に取り組むことにした。従来の縦割り型の開発では、とても目標とする小型化は果たせそうになかったからだ。

 近年は効率化のために、開発の分業・モジュール化を進める企業が多い。富士フイルムBIも従来は100人ほどの技術者が分野ごとに開発を進め、成果を集約する形で新製品を造っていた。ゲームチェンジモデルの開発では、そんな縦割りの開発体制を刷新し、すり合わせを極めることで、大幅な小型化を実現したのだ。

 例えば、プリンターの高さを抑えようとすると、印刷後の紙を保持する「排紙トレイ」に従来機より50枚少ない、約100枚しか紙を積めないという問題が発生した。トレイの深さが十分でないため、印刷した紙が滑り落ちてしまうのだ。以前なら紙送り機構を開発するチームだけで対策を考えて壁にぶつかっていたかもしれない。しかし、新製品ではトレイの真下にある電源基板上の部品の位置などを調整し、トレイの深さを確保した。これもすり合わせの成果だ。

 では、プリンターの内部は具体的にどう変わったのか。中をのぞいてみよう。

ApeosPrint C320 dwの外装の一部を外した状態
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ApeosPrint C320 dwの外装の一部を外した状態
4本並んでいる緑色の筒状の部品が、用紙にトナーを定着するために欠かせない「感光体」。(出所:日経クロステック)