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 全国で進む新型コロナウイルスワクチン接種において、2021年6月27日までに1万6182件の「副反応疑い報告」があった。この疑いをインターネット経由でオンライン報告できる電子報告システムは2021年4月に稼働済みだが、全報告の約85%はいまだ従来のファクスのまま。なぜシステム利用は進まないのか。

新システムで手入力や手戻りをなくす

 予防接種法に基づく副反応疑い報告制度は、医師が有事事象の中で副作用を疑った場合などに医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告、PMDAが情報を整理して調査し、その結果を厚労省の審議会で評価する制度だ。従来は医師らからの報告はファクスのみだった。

報告システムの概要
報告システムの概要
(出所:医薬品医療機器総合機構)
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 これに対しPMDAが稼働させたオンライン報告ができる新システムは、インターネットに接続したパソコンやタブレットなどを使ってWebブラウザーから報告する。あらかじめアカウントを作成して、医師などの報告者情報や患者情報、ワクチンの種類、接種状況、症状などを入力・登録する仕組みだ。

 報告Webサイトと管理・閲覧システムは、大興電子通信が約1000万円で受託し、2020年5月から2021年3月にかけて開発した。PMDAが運用する、医薬品副作用情報の受付や蓄積、解析などを担う「医薬品副作用・安全対策支援統合システム」上に、医療機関からの報告オンライン化の仕組みを新たに追加構築した。

 副反応疑いの報告をオンライン化した効果は大きい。ファクス報告の場合は、ファクスを受け付けたPMDAの職員が手書き文字を読み取って管理システムに入力していたが、その手間がなくなった。ファクスの文字が判別しにくかったり、入力内容に不足があったりすると、報告した医師らに職員が電話などで確認していたが、そうした手戻りもなくせた。

 そもそもコロナワクチン接種が始まるまでの副反応疑い報告は、年間1000件ほどだった。ほとんどの医師にとって、副反応疑い報告は慣れていない作業と言える。そのためか医師が副作用を疑う「基準」はまちまちで、報告項目の不足や不備も少なくなかったという。「書き間違いの確認や問い合わせに、非常に時間を要していた」(PMDA安全性情報・企画管理部)。

 医師で、PMDAの専門委員として副反応疑い報告の評価に従事した経験を持つ千葉大学医学部付属病院の黒川友哉助教は次のように振り返る。「死亡報告など急ぎの審査が必要な場合、PMDAで評価を担当する専門委員にもファクスが送られてくる。ファクスの文字を読み取るのはひと苦労だった」。

 こうした課題を解決すべくPMDAは新システム構築に当たり、入力画面を工夫した。入力必須なのかそうでないのかを分かりやすく表示したり、項目によっては内容をプルダウンで選べるようにしたりした。設計段階においては、国立感染症研究所が開発して利用実績がある、副反応疑い報告の申請書作成を支援するパソコン用ソフトの仕様を参考にした。

ワクチンの種類やロット番号などはプルダウンで選択できるようにするなど、入力項目を極力減らした
ワクチンの種類やロット番号などはプルダウンで選択できるようにするなど、入力項目を極力減らした
(出所:医薬品医療機器総合機構)
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