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 新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークは広がったが、日本人の学ぶ時間は減っている――。2021年7月5日、こんな実態が明らかになった。リクルートワークス研究所が2016年1月から毎年実施する「全国就業実態パネル調査(JPSED)」で分かった。

 同研究所は同調査で全国15歳以上の男女約5万人を対象に、調査前年1年間の個人の就業状態や所得、仕事の状態などについて、同一の個人を追跡調査している。加えて、同研究所同調査を基に「Works Index」という加工統計を作成している。「就業の安定」「生計の自立」「ワークライフバランス」「学習・訓練」「ディーセントワーク」の5項目で数値を算出し、合成したものだ。ディーセントワークとは仕事量や負荷が適切で、差別やハラスメントのない職場であるといった健全性が保たれていることを意味する。

日本人の働き方、総合的には前進したが…

  2017年1月のJPSED調査に基づく「Works Index 2016」から2021年1月のJPSED調査に基づく「Works Index 2020」まで、5年間の変遷をたどると「『学習・訓練』を除く4つの指標で水準が上昇し、総合的に見ると、日本の労働者の働き方は前進したといえる」(リクルートワークス研究所の孫亜文研究員・アナリスト)。背景について孫研究員は「新型コロナウイルスの感染拡大以外にも、政府や企業が働き方改革に本格的に取り組んできたことや、セクハラ撲滅を掲げる#MeToo運動などの影響が大きい」は分析する。

「学習・訓練」は2年連続で上昇していたが、2020年に低下した
「学習・訓練」は2年連続で上昇していたが、2020年に低下した
(出所:リクルートワークス研究所)
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 「学習・訓練」は2017年に31.3ポイントだったが、2018年に32.5ポイント、2019年に33.1ポイントと2年連続で上昇した。しかし2020年には2017年水準を下回る31.0ポイントまで下がった。2020年は、働き方改革により労働時間の短縮や休暇取得の増加が進んでいたことに加え、新型コロナの感染拡大により一部業種で休業や短時間勤務が求められて労働時間はさらに短くなった。JPSEDでは新型コロナ禍でテレワークが幅広い業種や職種で進んだことも明らかになっており、通勤にかけていた時間が浮いた人も少なくない。にもかかわらず、学習・訓練が2020年に低下したのはなぜか。

 学習・訓練の指標を細かく分析すると、2020年はOJT(職場内訓練)の機会が2019年と比べて1,9ポイント低下していた。OJTの種類には「(上司による)計画的な指導」「必要に応じた指導」など複数あるが、その中でも「(上司や先輩などから指導を受けてはいないが、他の人の仕事ぶりを)観察する(ことで新しい知識や技術を身に付ける)」の減り方が最も大きかった。

2020年はOJTの中でも「他の人の仕事ぶりを観察する」が減った
2020年はOJTの中でも「他の人の仕事ぶりを観察する」が減った
(出所:リクルートワークス研究所)
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 また調査では新型コロナ禍で対面研修が延期されたり中止になったりしたためでOff-JT(職場外訓練)の機会も大きく減ったことが分かった。

2020年はOFF-JTの機会がなかったという回答が増えた
2020年はOFF-JTの機会がなかったという回答が増えた
(出所:リクルートワークス研究所)
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 新型コロナ禍にテレワークが広がり、オフィスへの出勤が制限されたことで、OJTの在り方は変化した。学ぶ側は周りにいる人を観察したり、分からないことを「どうすればいいですか」とすぐ質問して学んだりすることが難しくなり、教える側も相手の表情などを見て内容やレベルを調整しながら指導することがしにくくなった。