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 米Google(グーグル)が送金決済アプリベンチャーのpring(プリン)を買収し、日本のスマホ決済市場に本格参入する見通しとなった。競争が激化する同分野で、グーグルはどんな事業戦略を描くのか。プリンの事業を読み解くと、既存のスマホ決済事業者と異なるユニークな戦略が見えてくる。キーワードは「業務用」だ。

店舗数は1桁少ない、プリンの魅力とは

 プリンは2017年設立の送金決済アプリサービスのベンチャー企業。個人間送金やQRコードを使った店舗での支払いに使える個人向けアプリ「pring(プリン)」を手掛ける。グーグルは同社の買収により、日本で同分野の事業を拡大する足がかりを得る。

 ただ、プリンアプリを使って支払える店舗は約10万店と、400万店規模の「PayPay」や「LINE Pay」より1桁少ない。利用者数は数十万人と、これも数千万人が利用登録済みのPayPayなどに遠く及ばない。グーグルは同社のどこに魅力を感じたのか。

 既存のスマホ決済事業者と比べたプリンの特徴は、「業務用プリン」と呼ぶ企業から個人への送金に特化したサービスを手掛けることだ。グーグルは日本での事業展開に向け、この業務用プリンに目を付けた可能性がある。既存のスマホ決済事業者と差異化したうえで、自社事業との相乗効果を見込めるからだ。

 業務用プリンを使えば、企業は従業員や顧客のプリンアプリに電子マネーとしてリアルタイムに送金できる。主な用途は従業員向けの経費や交通費の精算、フリーランスや個人事業主に業務を委託した際の業務委託費の支払い、個人顧客への返金など。利用企業数は約400社で、日本瓦斯(ニチガス)や串カツ田中ホールディングスが導入している。

 例えばニチガスは社員への経費や報奨金、ガス工事事業者への報酬などを業務用プリンで支払っている。今後は顧客からの料金支払いにも導入する予定だ。

 プリンアプリを使う際には「eKYC」による身元確認を義務づけている。他のスマホ決済サービスはATMから現金をチャージするといった用途には必ずしも身元確認を必要としない。プリンは企業における利用を想定し、ハードルが高いのを承知で身元確認を必須とした。