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 企業が消費税を納める際に必要となる「適格請求書(インボイス)」を電子化するプロジェクトの進行が当初予定よりも遅れている。政府は2023年10月に消費税の「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」を導入する予定だ。

 インボイス制度の開始に向けて電子インボイスの導入を目指しているのが、SAPジャパンや弥生などの会計ソフトベンダーが設立した電子インボイス推進協議会(EIPA)である。EIPAは2021年7月1日、平井卓也デジタル改革相に対して電子インボイスの仕様策定について現状報告をしたと公表した。専門家は準備をさらに急がなければ間に合わないと警鐘を鳴らす。

国際規格を基に日本版を策定

 電子インボイスがないと、企業など事業者は紙のインボイスと帳簿データを手作業で突合して納税額を計算するといった膨大な業務を抱えてしまう。同時に電子インボイス導入は世界の潮流でもある。対応は必須だ。

 EIPAは電子インボイスの標準仕様について、国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠すると2020年12月に公表済みだ。2021年1月に標準仕様策定部会を発足して策定を進めている。

 Peppolとは、国際的な非営利組織「OpenPeppol(オープンペポル)」が運営管理する仕様である。欧州の公共調達をオンライン化するための標準規格(Pan-European Public Procurement On-Line)が基になっている。

 OpenPeppolが定めているのは、受発注や請求の電子文書をネットワークで送受信するための文書やネットワークの仕様、運用ルールなど。欧州連合(EU)やシンガポールなど30カ国以上が採用しており、国際的な相互連携を保証している。

 ただ、国ごとに基本的な商取引の習慣が異なる。このため各国は自国の商習慣に合うようにPeppolに準拠した各国の「拡張仕様」を策定する必要がある。

 Peppolを採用する各国の拡張仕様を管理するのが「Peppolオーソリティー(Peppol Authorities)」と呼ぶ組織で、多くの国は行政機関として設立している。日本では2021年9月に発足するデジタル庁がPeppolオーソリティーになるとされ、平井デジタル改革相は電子インボイス導入をデジタル庁の「フラッグシッププロジェクト」と述べた。

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 日本は海外とどんな商取引の習慣の違いがあるのか。EIPAは平井デジタル改革相への現状報告と同時に公表した資料「日本版Peppol実現に向けた業務要件」で、仕様策定に向けた主な課題を列挙している。

 例えば請求に関する課題だ。海外では取引ごとに請求するのが原則だが、日本は複数の納品書などを基に「20日締め」「月末締め」といった具合に合算して請求するケースが多い。日本版Peppolでは当面、現状の業務プロセスのまま合算型の電子インボイスをサポートすべきだとした。

 また欧州と最も異なるのが、日本の消費税は「税込み」「税抜き」の両方が混在している点だ。欧州の消費税は全て外税なので、現状のPeppolは税抜き表記のみサポートしている。EIPAの資料は、日本版Peppolは当初税抜きの表記のみを許容しながらも、小売り取引では総額表示が義務付けられているため、将来的には税込み表記のサポートが望まれるとした。

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日本版仕様の公表に遅れ

 商取引の違いを踏まえて策定する必要がある日本版Peppol。内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室やEIPAは2020年12月に公表した「EIPAが想定する電子インボイス標準仕様の普及に向けたタイムライン」において、2021年6月末をめどに「仕様ver.1」を策定するとしていた。

電子インボイスの仕様標準化
電子インボイスの仕様標準化
(出所:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)
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 ところが2021年7月16日時点で仕様は公開されていない。その理由は日本でPeppolの拡張仕様を正式に公開するPeppolオーソリティーになるデジタル庁が発足するのを待っているためだという。