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 情報処理技術者試験の「基本情報技術者試験(FE)」に異変が起こっている。合格率が倍増しているのだ。

 以前20%台だった合格率は2020年度秋期試験では48.1%、2021年度春期試験の5月実施分では49.9%と受験者のほぼ半分が合格している。同時期の他の情報処理技術者試験ではこれほど目立った合格率の上昇はない。なぜFEだけ合格率が倍増しているのか。

基本情報技術者試験における受験率と合格率の推移
基本情報技術者試験における受験率と合格率の推移
(出所:情報処理推進機構の資料を基に日経クロステック作成)
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コロナ禍での受験者は「粒より」だった?

 「緊急事態宣言と重なる状況でも受験した人は、しっかりと準備をしており、何としても合格したいという意欲が高かったのではないか」。情報処理技術者試験を担当する情報処理推進機構(IPA)の国家資格・試験部は、FE合格率倍増の理由をこう分析する。

 IPAは新型コロナ禍で2020年度の試験日を度々見直した。2020年4月に予定していた2020年度春期試験は1回目の緊急事態宣言を受けて中止し、2020年10月に予定していた2020年度秋期試験は試験日程を2021年1~3月に延期した。1969年の試験開始以来、これほど試験の中止や延期が重なったことはない。

 FEの応募者数にも影響した。2020年度秋期試験の応募者数は約6万人と、2019年度秋期試験の約9万1000人と比べて約3分の2に減った。

 続く2021年度春期試験の5月実施分も、一部開催地域が緊急事態宣言と重なった。IPAが分析するように、例年より準備を怠らず合格への高い意欲を持つ、いわば「粒より」の受験者が増えたという推測は成り立ちそうだ。取材を進めると他にも合格率が高まったことと関係がありそうな『変更』があった。

CBT導入で受験者のメリット増

 その1つが試験方式の変化だ。IPAはFEについて2020年度秋期試験からCBT(Computer Based Testing)方式に全面移行した。CBTとはパソコンで受ける試験のことだ。