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 ATMを生産・販売する日立チャネルソリューションズ(旧日立オムロンターミナルソリューションズ)が再スタートを切った。2021年3月に日立製作所の完全子会社になり、7月に社名を変えた。キャッシュレス決済の進展で先進国を中心に主力のATM市場の縮小は避けられない。日立チャネルはどんな生き残り策を描いているのか。

 約1兆円を投じて米GlobalLogic(グローバルロジック)を買収すると発表した前日の2021年3月30日、日立は目立たないが長年の懸案に答えを出した。傘下の日立オムロンターミナルソリューションズの株式について、日立がオムロンの持ち分(45%)を全て買い取り完全子会社にすると発表したのだ。日立はこの資本構成見直しを社内で長年議論してきたが、オムロンが成長の軸足をヘルスケアなどに移し始めたこともあり、ようやく決着した。

日立チャネルソリューションズを巡る主な動き
時期概要
2004年10月日立製作所とオムロンが共同出資で「日立オムロンターミナルソリューションズ」を設立
2014年3月日立がインドのプリズムペイメントサービス(現日立ペイメントサービス)を買収
2016年5月日立がIoT関連の「Lumada」を提供開始
2018年5月金融・決済関連のソフトやサービスを手掛けるスリランカのインターブロックスと資本業務提携
2019年1月日立がインド最大の国営商業銀行であるインドステイト銀行と合弁会社を設立
11月インターブロックスを完全子会社化
2021年3月日立が日立オムロンターミナルソリューションズを完全子会社化
7月日立チャネルソリューションズに社名変更
7月日立が約1兆円を投じて米グローバルロジックを買収

 日立にとって、日立チャネルの完全子会社化は簡単な決断ではなかった。日立チャネルの主力であるATM機器事業は、先進国を中心に縮小が避けられないからだ。

 特にキャッシュレス化の進展が著しい中国でこの傾向が顕著だ。中国人民銀行(中央銀行)によると、中国のATM設置台数は2021年第1四半期(1~3月)末時点で100万6200台と、ピーク時の2018年第3四半期(7~9月)末時点と比べて10万台以上減った。

 お膝元の日本でもATM市場の縮小は進んでいる。全国銀行協会によると、メガバンクや地方銀行を中心にATMなどの設置台数(ゆうちょ銀行を除く)は2020年で9万7895台と、この10年で1割以上減った。邦銀は固定費負担の重いATMからスマートフォンなどデジタルチャネルへのシフトを進めており、「国内市場の規模縮小はやむ得ない」(日立チャネルの八木鉄也社長)。

 それでも日立が完全子会社化に踏み切ったのは、ATMやPOS(販売時点情報管理)レジを軸に、機器販売にとどまらない多様なサービスを展開できるとみているからだ。例えば東南アジアでは出金専用のCD(現金自動支払機)からリサイクル(紙幣環流型)ATMへの置き換えが進むとみており、「需要を刈り取る余地がある」(八木社長)。さらにリサイクルATMの販売にとどまらず、ATMの監視・運用や決済サービスまで提供し、収益基盤を広げる戦略を推し進める。タイやインドネシアでは既にそれぞれ数千台のATMを運用しており、1万台の大台到達も視野に入れる。