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 全国の医療機関で新型コロナウイルスワクチン不足の懸念が広がるなか、政府が開発し、自治体や医療機関などがデータを入力する「ワクチン接種記録システム(VRS)」を巡って、医療機関から不満が噴出している。医療機関にとってはデータ入力の負荷が高いうえ、政府が「ワクチンの配分に活用している」とするVRSのデータの使い方にも疑問を投げかけている。

ワクチン不足の懸念から接種に急ブレーキ

 政府は、主に自治体の集団接種や医療機関での個別接種で使う米Pfizer(ファイザー)製のワクチンを、2週間ごとに自治体に配分している。2021年8月2日からの2週間分におけるワクチン配分で、政府は「在庫がある」と見なした自治体への配分を1割減らした。減らしたのは、人口に応じて自治体に割り当てる「基本計画枠」の分で、判断の基としたのはVRSへの入力データという。

 ワクチン不足の懸念から、個別接種を担う医療機関は接種に急ブレーキをかけている。日本医師会の中川俊男会長は2021年7月21日の記者会見で「全国の医療現場から、ワクチンが入手できないという声が届いている。新規予約の停止や既存予約のキャンセルで現場は混乱している」と説明した。

 東京都江戸川区にある目々沢医院では、既に2021年9月いっぱいまで予約が埋まっていたが、「ワクチン入荷のめどが見通せない」として2021年7月18日、新規予約を中止した。同医院の目々沢肇院長は「最近になって発注本数を(区から)制限されるようになった」と明かす。

 政府は、自治体によってはワクチン接種スピードが想定以上となりそのスピードを「最適化」するために、2021年8~9月の配分量を調整すると説明している。この調整をもって、自治体の接種スピードのばらつきをならし、全国で1日120万回にするという。調整において政府はVRS入力データなどを使って在庫があると見なした自治体への配分を減らした。

 政府は2021年8月から、全体の2割を「都道府県裁量枠」として、都道府県が独自に調整して市区町村に配分するように変えた。合わせて、都道府県が配分の参考にできるように、これまで政府が配分の参考としていた、VRSと「ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)」の両データを可視化したダッシュボードについて、その閲覧とダウンロードの権限を都道府県に付与した。

ダッシュボードのイメージ
ダッシュボードのイメージ
(出所:小林史明内閣府大臣補佐官の説明資料)
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 V-SYSはワクチンの供給量や在庫を管理するシステムである。このダッシュボードでは、V-SYSで管理する供給数からVRSで管理する接種回数を差し引き、在庫数として表示している。VRSのデータを基にした市町村別や年代別の接種数も確認できる。