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 ドイツ連邦議会(下院)が2021年5月21日、同連邦参議院(上院)が同月28日、同連邦政府が閣議決定した「ドイツ道路交通法と自賠責保険法を改正する法律案」(以下、改正道交法)を可決した。これにより、「ドイツでは(特定分野に限定して)22年にレベル4の自動運転車が公道を走れるようになる」(多摩大学経営情報学部専任講師で名古屋大学未来社会創造機構特任助教の樋笠尭士氏)見込みだ。

 同改正道交法で特定分野としてレベル4が認められるのは、(1)シャトル交通サービス、(2)自動運転ミニバス、(3)ハブ・ツー・ハブ交通、(4)オフピーク時のニーズに応じたサービス、(5)ラストワンマイルの人やモノの輸送、(6)自動バレーパーキングなどである。ハブ・ツー・ハブ交通とは、商用車などを想定したもので、目的地や到着地の近くの複雑な場所は運転者による走行とし、それ以外の高速道路などは自動運転による走行とする方式を指す。

 日本はレベル3の解禁では世界に先行した(図1)。だが、レベル4の実現に向けては、警察庁の有識者委員会が、22年度までの道路交通法の改正を視野に入れてルールづくりを進める方針を示している状態。レベル4では、ドイツがリードする形となりそうだ。

図1 世界に先駆けて実用化されたホンダのレベル3自動運転車
図1 世界に先駆けて実用化されたホンダのレベル3自動運転車
(撮影:日経クロステック)
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 今回のドイツにおける改正道交法のポイントは主に4つである(図2)。1つめは、「運転者無しでも所定の運行領域を独立して運転することができる」と明記していることである。「『運転者無し』との文言から分かる通り、レベル4以上の自動運転を許容している」(樋笠氏)

図2 ドイツの道交法における今回の改正のポイント
図2 ドイツの道交法における今回の改正のポイント
樋笠尭士氏の取材に基づき日経クロステックが作成した。
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 2つめは、「自然人(生身の人間)の技術監督者を置かなければならない」と定めていること。樋笠氏によると、「レベル4以上では交通事業者による遠隔操作が想定されており、技術監督者は、航空交通における航空管制官や、鉄道交通における列車運行管理者と多くの点で類似する。その主たる業務は、緊急時の車両の停止とその前提となるテークオーバー(運転操作の引き継ぎ)の承認である」という。

 そして、特筆すべきが、自動運転システムの開発者にとって危険回避プログラムなどを作成する場合のよりどころとなる「倫理的な条文」が明記されたことである。具体的には、「様々な法益への損害が避けられない場合は、人命保護を最優先しながら、おのおのの法益の重要性を考慮する」「人命に対して避けられない危険が生じた場合には、個人的な特徴に基づいてさらなる重み付けをしない」といった文言だ。