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 政府による新型コロナウイルスのワクチン供給が不足し、地方自治体などで新たな接種予約が2021年6月から順次止まった問題が長引いている。

 政府は7月26日、ワクチンの余剰在庫が多いと見なした市区町村へのワクチン供給量を削減する措置を一部撤回した。同日、新たに決めた供給量は以前と同じく市区町村の人口を算定ベースとしており、2週間弱で方針を転換した形だ。

 ワクチン接種円滑化を担当する河野太郎規制改革相は、接種スピードの違いなどから一部の市区町村にワクチンの余剰在庫があると見て、当初は自治体間で融通してもらうことで不足の解消を図ろうとした。しかし、この対策は7月中旬までに軌道修正され、自治体間の融通でなく、政府から市区町村への配分量の調整へと変わった。

ワクチン調達と供給を担当する河野太郎規制改革相。ワクチン不足解消策で方針転換が続いている
ワクチン調達と供給を担当する河野太郎規制改革相。ワクチン不足解消策で方針転換が続いている
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 実際、7月16日には8月上旬に配送するワクチンについて余剰在庫があると見なした一部自治体への人口に基づく「基本計画枠」の割り当てを1割ほど削減。併せて、市区町村にあるワクチン余剰在庫を推定するための参考データを可視化して、都道府県にもその機能を開放した。都道府県が一部のワクチンを接種スピードの調整枠として市区町村に配分するためだ。

 ただシステムで導いたデータはあくまで参考値にすぎなかった。新規予約の停止に追い込まれた多くの市区町村が「余剰在庫はない」と反発したことで、政府から市区町村への割り当て削減は7月26日に撤回した。現状の政府システムでは市区町村の余剰在庫を正確に把握できないことが、対策のブレを招いた一因といえる。

単純計算で「潜在的な在庫」を可視化

 市区町村にワクチンの余剰在庫がどれほどあるのかを推定するダッシュボード機能は、2つのシステムを連携させることで開発した。ワクチン接種者を記録管理する「VRS(ワクチン接種記録システム)」と、市区町村や都道府県へのワクチン供給量を管理する「V-SYS(ワクチン接種円滑化システム)」である。

 V-SYSではワクチンの実際の配送量、VRSでは市区町村や都道府県の接種会場ごとのワクチン接種者情報、をそれぞれ管理する。接種後すぐにVRSへ接種者情報が入力されていれば、リアルタイムで接種の実績数を把握できる。

 そこで政府はV-SYSで管理した供給実績数と、VRSで把握した接種実績数(1回目と2回目を区別しない単純合算)を引き算することで、必要な在庫か余剰かを区別しない「在庫」を単純計算して可視化するダッシュボード機能をVRSに追加した。ダッシュボード機能は今回から市区町村に加えて都道府県にも公開している。

 単純計算した在庫は、実際の余剰在庫と大きくかけ離れている。まず自治体は1回目の接種を終えて2回目を控えている人向けのワクチンを必要在庫として確保しなければならない。加えて、すでに予約を済ませた接種希望者のために、1人当たり2回分のワクチンを確保する必要がある。

 1回目の接種を済ませた人向けの必要在庫はVRSなどから計算で導けるが、すでに予約を済ませた人向けの必要在庫は、自治体ごとに人手で確認する必要がある。河野大臣の下でVRSを担当する小林史明内閣府大臣補佐官は「実態の在庫とは異なる前提で、自治体間の調整を図る参考データとして活用してほしい」と呼びかける。

 ダッシュボード機能に対しては、あくまで参考データながら「実際に市区町村の担当者と確認を取りながら調整枠を使う参考にはなる」(神奈川県)などと評価する声もある。しかし、7月16日の配分でワクチン供給を削減された自治体からは反発の声が上がった。政府からの配分もこの参考データが使われたと見られるからだ。