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 三菱電機は2021年7月28日、漆間啓専務執行役が同日付で社長に昇格する人事を発表した。杉山武史社長は、鉄道車両用空調装置などの検査不正の判明を受けて同日付で辞任し、特別顧問に就いた。

三菱電機の新社長に就任した漆間氏
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三菱電機の新社長に就任した漆間氏
(写真:日経クロステック)

 新社長の漆間氏は1982年に三菱電機に入社。FA(ファクトリーオートメーション)システムの担当や欧州部門のトップを務めた。技術系出身者が社長を務めることが通例となっていた同社では珍しい事務系出身の社長となる。

 漆間氏は「新社長として課せられた使命は変革」と強調した。「例えば、失敗を許容し、挑戦できる風土をつくることが重要」(同氏)と語った。社内外の声に耳を傾けることと、透明性の高い情報開示の2点に力を注ぎ、企業風土の刷新と信頼回復に取り組むと表明した。

 これまで不正を一掃できなかった理由としては、「上にものが言えない」社風を挙げ、「まず経営幹部が今までの行動を改めるべきだ」と漆間氏は述べた。「私自身が従業員とどう接してきたか、従業員自身がものを言える土壌をつくってきたかを反省しながら、経営の透明性を上げたい」(同氏)と、自らが先頭に立って変革する姿勢を見せた。

 縦割りが問題視されている組織体制については、品質に関わる担当執行役を選任し、現在各事業本部に属している品質部門を統括する方針を明らかにした。今後、企業風土の変革のために外部の人材を招へいする可能性についても触れた。

「360度評価」で社長候補を選出

 漆間氏は杉山前社長の辞任表明を受け、異例のプロセスで選ばれた。取締役指名委員長の薮中三十二氏は「指名委員会がイニシアチブを取って選考した」と説明。従来は社長が次期社長候補を推薦していた。

 具体的にはまず、指名委員会が執行役の中から、上司・同僚・部下からの人物評価である「360度評価」の内容などを踏まえて、数人の候補者を選んだ。執行役に就任したばかりの比較的若い人物も候補に上がっていたという。その後、社外取締役や社外のコンサルタントによる複数回のインタビューを経て新社長が決定した。

 薮中氏は「360度評価では、『厳しくて話ができない』など、人によって部下からの評価に驚くぐらいの差があった」と明かした。漆間氏については「変革に対する熱意に加えて、部下から厚い信頼を得ている点で適任だと判断した」(薮中氏)と選考理由を語った。

 一方で、漆間氏は検査不正問題の発覚当時、社長に次ぐ実質ナンバー2を務めていた人物だ。不正を防げなかった経営陣の一員である漆間氏を社長候補から外さなかった理由について、薮中氏は「漆間氏は検査を実施した現場と直接関わりがなく、問題ないと判断した」と説明した。

 外部人材の採用については指名委員会で議論があったものの、「信頼回復や品質管理問題に対処するためには現場に精通し、従業員が信頼できる人物である必要があると考えた」として候補に残らなかった。

 三菱電機の長崎製作所は、1985年から鉄道車両向け空調装置と同空気圧縮機ユニットについて検査不正を繰り返していた。顧客との契約内容に違反して性能検査試験を省略したり、試験内容を勝手に変更したり、90年からは品質データを自動生成するプログラムを使い、ねつ造した品質データを検査成績書に記入したりしていた。こうした品質不正の発覚や近年の労務問題を受けて、杉山前社長は2021年7月2日の記者会見で引責辞任を表明した。

 同社は対応策として、外部の弁護士をトップとした調査委員会を設け、品質不正を全社的に再調査している。全従業員を対象にアンケートを配布済みで、同年8月をめどに回収する。アンケートに基づき、従業員に対して具体的な聞き取り調査も行う予定だ。