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 米Apple(アップル)は2021年5月27日、部材調達リスト「Apple Supplier List」の最新版(2020年版)を公開した。昨年はコロナ禍での混乱で公開されなかったため、2年2カ月ぶりとなる。同リストには、前年仕入れ額の97~98%を構成する200社が記載されており、そこからは部材メーカーのすう勢がうかがえる。前編では、過去8年分のデータを基にアップルの部材調達の最新の傾向を、日経エレクトロニクス契約記者の大槻智洋氏に分析してもらった。今回は、リストに掲載された企業数でトップの台湾に肉薄した中国サプライヤーの注目株を、野球の「打順」になぞらえて紹介してもらう。(日経エレクトロニクス)

 

 「Apple Supplier List」の最新版に掲載されている主要な中国サプライヤーの横顔を、「野球の打順」になぞらえて見ていこう。読者の方にも身近な野球の打順に沿って紹介することで、伸びゆく中国企業を記憶しやすくなると考えたからだ。もちろん、そこには筆者の私見が入るがそこはご容赦いただきたい。なお、各企業の資金力に直結する時価総額も示す*1

*1 中国エレクトロニクス企業の時価総額は一般に、日本企業のそれよりも大幅に高い。例えばパナソニックの3.2兆円、シャープの1.1兆円と比較してみるとそれがよく分かる。
表1 中国勢の“対Apple打線”
主な中国サプライヤーの位置付けを野球の打順になぞらえた。時価総額は資金力に直結する。時価総額が高いほど、より少ない希薄化でより多くの金額を証券市場から調達できるからだ。希薄化とは既存株主の持株比率低下を指す。(表:大槻智洋)
打順社名証券コード時価総額
英文中文現地通貨円換算(兆円)
1Lens Tech蓝思3004331430億人民元2.4
2GoerTek歌爾声学0022411410億人民元2.4
3Luxshare立訊精密0024753070億人民元5.2
4BYD比亚迪0025946270億人民元10.7
5BOE京東方0007252070億人民元3.5
6Lingyi iTECH領益智造002600630億人民元1.1
7JCET長電600584700億人民元1.2
8AAC Technologies瑞声002018690億香港ドル1
9(DH)WillSemi(OmniVision)韋爾(豪威)6035012730億人民元4.6
9(DH)Tianma Microelectronics天馬 000050230億人民元0.4
9(DHを使わない場合)Sunwoda Electronics欣旺達300207470億人民元0.8
9(DHを使わない場合)Dongshan Precision東山精密002384340億人民元0.6

 先頭打者はLens Tech(藍思)だ。カバーガラス加工で全打席で出塁(2012年分から8年分の全リストに掲載)されたうえに、選球眼(新分野の選択)も優れている。2020年に江蘇省泰州市の台湾Catcher(可成)中国法人を約1500億円で買収し、筐体(きょうたい)という高単価な機構部品事業を開始した。21年7月の時価総額は1430億人民元(1人民元=17円換算で2.4兆円)である。なお、同社はスマートデバイスのEMS/ODM事業に参入し、年1億台を製造する計画を持つ。iPhoneはまだ受注できていないようだが、Androidスマートフォン(スマホ)の最終組み立ては受注済みという。

 メジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手の定位置で、4番以上に重要との説もある2番打者を担うのは、中国GoerTek(歌爾声学)だ。「AirPods」のEMS/ODMを受注し続けた。Bluetoothイヤホンの普及という絶好機を生かしたのだ。同社はMEMS(微小電子機械システム)マイクやヘッドマウントディスプレーも手掛ける器用さも持っている(図1)。時価総額は1410億人民元(2.4兆円)だ。

図1  GoerTekが製造する製品例
図1  GoerTekが製造する製品例
筆者の調査によると、GoerTekは米FacebookのVR(仮想現実)ヘッドマウントディスプレー「Oculus Quest 2」の製造を担っていた(写真:Facebook)
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4番打者は時価総額10兆円のBYD

 クリーンアップを務める3社の社名と時価総額を以下に挙げる。3番打者は「ミニFoxconn(鴻海)」とも呼ばれるLuxshare(立訊精密)だ。同社は新世代iPhoneの一部(21年内発売)を量産する準備を進めている。中国資本の企業として初めて、AppleスマホのEMS/ODMを受注したようだ。時価総額は3070億人民元(5.2兆円)である*2

*2 Luxshare創業経営者のLaichun Wang(王来春)氏は三洋電機の中国オーディオ工場を経て、21歳の時(1988年)にFoxlink(正崴)が中国に設けたばかりのケーブル/コネクター工場に作業員として転職。Foxlinkの経営者はFoxconn 元CEOのTerry Gou(郭台銘)氏の弟だった。Wang氏は2004年、FoxlinkやFoxconn傘下のFIT Hong Teng(鴻騰)の下請けとしてLuxshareを設立した。

 4番打者は、中国では押しも押されもせぬ電気自動車(EV)メーカーで、傘下のパワー半導体メーカーを21年5月にIPO(新規公開株式)させると発表した中国BYD(比亜迪)だ。時価総額は6270億人民元(10.7兆円)と大きい。5番打者は大型液晶パネル市場の覇者であるBOE(京東方)。時価総額は2070億人民元(3.5兆円)である。