全2208文字
PR

 店舗で実際に商品に触れて、良さを理解したらネットで注文する――。「体験を売る店」として、シリコンバレーから全米23店舗に広がった米b8ta(ベータ)が2020年8月に日本上陸してから1年。同じコンセプトを持つ体験型の店舗が日本で増えてきた。

格安コーヒーは集客手段

 2021年7月1日、東京・渋谷に1号店が開業した「AZLM CONNECTED CAFE(エイゼットエルエム・コネクテッド・カフェ)」は、体験型店舗をカフェ業態と融合させることで集客を図る新業態だ。売り文句は「スペシャリティコーヒーが社長のムチャブリで衝撃の99円に!」である。

 同店を運営する、デジタルサービス関連企業コネクテッドコマース(東京・渋谷)の中村武治社長は「自社系列のカフェで約400円で提供しているコーヒーをこの店舗では99円で提供している」と話す。高額のエスプレッソマシンでいれたエスプレッソも111円で提供する。

 AZLMの来店客はコーヒーを飲んだり店舗で時間を過ごしたりしながら、店舗の棚に並べられた名産品や銘酒などを「体験」する。いずれも地方の生産者や酒蔵がつくったものだ。客は店側から「生産者の話をビデオ会議で聞く」といったことは強要されず、あくまで自分の意思で体験できる。気に入った商品があればその場でも後日でも専用サイトから購入できる。

出店者に貸し出す商品の展示スペース。ビデオ会議で生産者やソムリエらの説明や助言が得られる
出店者に貸し出す商品の展示スペース。ビデオ会議で生産者やソムリエらの説明や助言が得られる
(撮影:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 格安コーヒーはあくまで集客手段であり、店舗の収益源は展示スペースや専用サイトの手数料だ。来店客の行動は匿名化を前提に、店舗に設置されたAI(人工知能)カメラやセンサーなどで収集され、映像や会話を解析した結果は出品者に提供されマーケティングに活用できる。

 出品者にとっては、商品が売れるかどうかに加えて、マーケティングや販売促進、商品開発に役立つデータを得られるかどうかも出店のメリットを判断する材料になる。展示スペースの貸出料は月3万3000円(税込み)。サイトでの販売手数料は10%だ。

NTT東からアプローチ

 AIカメラなどの設備提供やデータの収集・分析を担当するのはNTT東日本だ。AIカメラは来店客の年齢層や性別などを推定する。人感センサーなどと組み合わせ、どの商品の前で来店客が長く滞在したか、どのような客がどんな商品に関心を示して手にとったかなどを統計データとして蓄える。

店内にはAIカメラや人感センサーなどを張り巡らせている
店内にはAIカメラや人感センサーなどを張り巡らせている
(撮影:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 店舗ではビデオ会議で生産者やソムリエから商品選びの助言も得られ、その会話もテキスト化して分析に活用できる。こうしたデータを取得するため、来店客には入店時に専用端末で会員登録やデータ取得への同意を求める。データ分析を担当するNTT東によれば、データは全て匿名化して統計的に処理しているという。