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 経済産業省がAI(人工知能)ガバナンスの整備に向けたガイドラインを公表した。AIを巡っては、不適切な学習データで差別や偏見につながったり、十分な精度が出なかったりするケースが増えている。AIガバナンスの整備は、こうした事態の回避につながると期待される。

 もっともガイドラインに法的拘束力はなく、AIシステムの開発や運用を手掛ける事業者などが自主的な取り組みにおいて参考とするものになる。企業はどう対応すべきだろうか。

14項目の行動目標を提示

 経産省が2021年7月9日に公表した「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドラインver.1.0」は、すべての事業者が実施すべきとした行動目標や実践例などで構成する。対象は機械学習を用いたAIの開発事業者や運用事業者、AI学習に使うデータの作成や提供を担う事業者など。経産省の有識者会議「AI原則の実践の在り方に関する検討会」(座長は東京大学未来ビジョン研究センターの渡部俊也教授)が取りまとめた。

 行動目標としては、「AIシステムがもたらしうる正負のインパクトの理解」「AIガバナンス・ゴールの設定の検討」「ゴール達成に向けたシステムデザイン」など14項目(細かな項目を含めると21項目)を挙げた。実践的な枠組みが整理されており、AIガバナンスの知見がなかった事業者でも具体的な取り組みを進めやすくなっている。

マネジメント体制整備とリスク管理のための行動目標の全体像
マネジメント体制整備とリスク管理のための行動目標の全体像
出所:「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドラインver.1.0」
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 AIの開発事業者の中には、大手ベンダーを中心にこれまでもAIガバナンスに取り組んできたところは多い。例えばソニーは「ソニーグループAI倫理ガイドライン」、富士通は「富士通グループAIコミットメント」、NECは「NECグループAIと人権に関するポリシー」、NTTデータは「NTTデータグループAI指針」をそれぞれ策定済みだ。ただ、中小企業やAIを実際に運用する側のユーザー企業でこうした取り組みが進んでいないことが課題となっていた。

 その点、今回のガイドラインはAIガバナンスへの取り組みを広げつつ、ユーザー企業との目線を合わせやすくする効果も見込む。実際、経産省の有識者会議ではAIの開発事業者から、「自社のAIポリシーをパートナー企業に伝える際に『経産省のガイドラインにこう書いてある』といったお墨付きがあると意識合わせがしやすくなる」との要望が出ていたという。