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 「バイオマス材料を使ったタイヤ開発には各社取り組んでいるが、先端研究施設の活用でより適用の幅を広げられる」──。こう語るのは、住友ゴム工業研究開発本部分析センター センター長の岸本浩通氏。2021年6月下旬に兵庫県で開いた技術・施設説明会での一幕である。

 世界的なカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)需要の拡大を受けて、各タイヤメーカーは製品での低燃費化や省資源化に向けた技術開発、そして事業活動を通した脱炭素化を急ぐ。タイヤの売上高ベースの世界シェア5位に位置する住友ゴムにとって、こうした転換期は「下克上」を狙う好機になり得る。

タイヤの材料技術を解説する住友ゴム工業研究開発本部分析センター センター長の岸本浩通氏
タイヤの材料技術を解説する住友ゴム工業研究開発本部分析センター センター長の岸本浩通氏
(撮影:日経クロステック)
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脱炭素タイヤへ、CNF適用拡大も

 同社が有望視するバイオマス材料に、植物由来の微細繊維「セルロースナノファイバー(CNF)」がある。19年に発売した低燃費タイヤの旗艦モデル「エナセーブNEXTⅢ」でサイドウオール(側壁)に適用した。タイヤの質量比では数%未満にとどまるものの、「世界初」(同社)の試みとして注目を集めた。

 CNFは植物の細胞壁内に存在し、直径が数nm、長さが数百nmほどで繊維状のもの。強度(引っ張り強さ)は3GPa(鉄の5倍)、密度は1.5g/cm3(鉄の5分の1)に上る。

 CNFの基となる植物は成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、材料自体で脱炭素に貢献できる。さらに、樹脂やゴムの補強材として使えば、完成品の強度を高めたり、軽くできたりする可能性を持つ。耐久性に優れた低燃費タイヤを実現しやすい材料といえる。