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 トヨタ自動車が14年ぶりに全面改良して発売した新型SUV(多目的スポーツ車)「ランドクルーザー」(図1)。気になるのは、電動化という時代の大潮流に逆行するようなパワートレーン選択だ。

図1 トヨタ自動車の新型「ランドクルーザー」
図1 トヨタ自動車の新型「ランドクルーザー」
2021年8月2日に発売した。価格は、ガソリン車が510万~770万円(消費税込み)で、ディーゼル車が760万~800万円(同)。(出所:トヨタ自動車)
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 ハイブリッド車(HEV)すら設定せず、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの内燃機関車に絞った。理由を探ると、高い信頼性や耐久性、悪路走破性が求められる「ランクル」ならではの部品選択の考え方があった。

脈々と受け継がれる設計思想

 「現時点では、『生きて帰ってこられる』という性能を担保できる電動システムがないのが正直なところ」。こう打ち明けるのは、新型ランクルの開発責任者を務めたトヨタMid-size Vehicle Company MS製品企画ZJ主査の横尾貴己氏である。

 どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ――。1951年の初代誕生から70年間、ランクルが守り続けている価値の根幹だ。ランクルが走る場所は、一般の人の想像を超えた世界(図2)。アフリカのど真ん中で川を渡り、帰ってこないといけない。

図2 世界を走り回りランクル
図2 世界を走り回りランクル
砂漠地帯から雪原まで、どのような環境でも性能を発揮できる「信頼性」「耐久性」「悪路走破性」を重視して開発する。(出所:トヨタ自動車)
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 ランクルの開発に長年携わってきた小鑓貞嘉氏(トヨタMid-size Vehicle Company MS製品企画ZJ主査)は「必ず生還できるようにする、という設計思想を脈々と受け継いできた」と力を込める。その思想を反映したのが、新型ランクルのパワートレーンやパワーステアリング(パワステ)の選択だった。電子部品の搭載位置にも、ランクルならではのこだわりがある。

辺境の地でHEVを整備できるか?

 新型車でHEVの採用を見送った大きな理由は、辺境での修理の難しさにある。エンジンやモーター、PCU(パワー・コントロール・ユニット)、そして電池など、HEVの修理には様々な専門知識や特殊な部品が必要になる。横尾氏は「HEVを整備する土壌がない場所に行っても、(歴史の長い)ガソリンやディーゼルのエンジン車であれば何とか修理できるので生きて帰ってこられる」と判断した。

 それでも、カーボンニュートラルを目指すトヨタにおいて、「ランクルといえども、ありとあらゆる選択肢を考えていかなといけない」(同氏)という。システムとしての信頼性を担保できるパワートレーンの開発を続け、電動化の道を模索していく方針だ。