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 スタートアップのVIE STYLE(ヴィー スタイル)は、開発中のイヤホン型脳波計「VIE ZONE(ヴィー ゾーン)」の医療応用に動き出した。国立がん研究センター東病院と共同で、VIE ZONEを用いて内視鏡処置時の麻酔のかかり具合をモニタリングするシステムの開発を始めた。将来的にはモニタリングするだけでなく、聴覚刺激で麻酔効果を補助することも視野に入れる。

 そもそもイヤホン型脳波計とはどのようなものか。脳波を測定する際は、頭皮に多数の電極を装着するのが一般的だ。しかし従来の手法だと装着するのに時間がかかる上に見た目も悪いため、日常生活での脳波データを取得するのは難しい。VIE STYLEの茨木拓也CNTO(Chief Neuro Tech Officer、最高脳科学責任者)は「脳波を日常的に取得するためのデバイスとしてはイヤホン型が適している」とイヤホン型のメリットを説明する。

イヤホン型脳波計「VIE ZONE」
イヤホン型脳波計「VIE ZONE」
(出所:VIE STYLE)
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 同社の開発するVIE ZONEの見た目は左右一体タイプのワイヤレスイヤホンそのものだ。左右の耳に挿入するイヤーチップが電極となっており、外耳道から脳波を取得する。形状が似ているだけでなくイヤホンとしての機能もあり、音声や映像コンテンツを視聴することによる脳波の変化を検出することができる。

 イヤホン型脳波計の弱みは電極が左右に1つずつしかないことだ。多数の電極を用いる頭皮上脳波計に比べ、取得できる脳波の総量は限られる。この課題を克服するためにNTTデータ経営研究所との共同研究で開発したのが「EAR2BRAIN」技術だ。

イヤホン型脳波計と頭皮上脳波計の相関を調べている様子
イヤホン型脳波計と頭皮上脳波計の相関を調べている様子
(出所:VIE STYLE)
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 EAR2BRAINはイヤホン型脳波計で取得した「耳の信号」から「頭皮上脳波の信号」を推定する技術。イヤホン型脳波計と頭皮上脳波計を両方装着し、同時並行で取得した脳波データをAI(人工知能)に深層学習させることで、情報量の限られるイヤホン型脳波計のデータを補完することに成功した。2020年11月25日の発表によれば、「5種類の操作のうち、ユーザーがどれをイメージしているかを当てられるか」を検証したところ、イヤホン型脳波計のみを用いると70%弱の精度だったが、EAR2BRAIN技術を利用することで80%まで向上できたという。