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 デジタル政策の司令塔となるデジタル庁が2021年9月1日に発足する。2001年に施行されたIT基本法は廃止となり、デジタル社会形成基本法が施行される。

 デジタル社会形成基本法やデジタル庁設置法も含むデジタル改革関連法は2021年5月12日に成立した。これらの法律には慶応義塾大学の村井純教授やNECの遠藤信博会長など有識者9人からなる政府の「デジタル改革関連法案ワーキンググループ(WG)」の提言が反映されている。

 同WGの座長を務めた村井教授にデジタル庁への期待を聞いた。村井教授は政府のIT総合戦略本部本部員であり、2020年10月からデジタル政策分野について菅義偉首相に助言する内閣官房参与も務めている。

村井純・慶応義塾大学教授
村井純・慶応義塾大学教授
(写真:村田 和聡)
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デジタル庁への2つの期待

 「出来過ぎ感がある」――。村井教授にデジタル庁についてどう思うかを尋ねたところ、こんな言葉が返ってきた。「国のIT政策に関して期待度が高めのボールを投げてきたが、理念や仕組みのうえではそれらがほぼ実現しそうだ」(村井教授)。

 村井教授はデジタル庁に大きく2つの期待を寄せる。1つ目は、行政のデジタル化に関して省庁間で連携できるよう調整すると同時に、政府システムと自治体システムの調和を図ることである。

 「国のIT政策に20年間携わり、できたこともできなかったこともたくさん経験してきた。できなかったことの原因の多くは、各省庁や地方自治体との調整が難しかったことに帰着する」と村井教授は振り返る。

 デジタル庁は国や地方自治体などの情報システムの基本方針を策定する。情報システム関連予算を一括計上し、「基本方針」に基づいているか審査したうえで予算を配分、プロジェクト管理する仕組みの構築を目指す。2025年度末までに自治体ごとに異なる行政システムを統一・標準化する目標も掲げる。

 デジタル庁発足により他省庁や自治体との調整がスムーズに進むようになれば、「これまで以上にさまざまな方策を繰り出せるようになるだろう」と村井教授は話す。

 もう1つの期待は、全国民が幸せになるようなデジタル社会の実現である。「これまでの国のIT政策は経済や産業の活性化が焦点で、見通しが立ってきた。それもあって20年間のうちの後半の10年間は、個人が健康で幸せな生活を送り、災害発生などの緊急時に国民を守るためにデジタル技術を活用すべきだとずっと主張してきた」(村井教授)。