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アシストスーツで通信機器をロック

 まず、移乗介助機器についての具体例を見ていこう。利用者をベッドから車いすなどへ移乗させる作業は、介護に関わる業務の中でもとりわけ重労働であり、かねてロボットによる支援が望まれている。移乗介助機器には、介護者が身体に装着して使うパワーアシストスーツのような装着型と、機械の力で利用者を持ち上げる非装着型がある。

 装着型の移乗介助機器では、介護者が身体に装着する際にベルトを緩く締めていたため、介助時に装置がふらついて利用者ごとバランスを崩した事例があった。さらに、介護施設での構内連絡用のPHS(Personal Handy-phone System)をポケットに入れたまま移乗介助機器を身に着けたため、緊急の連絡を受けられなかったという事例の報告もあった(図1)。ポイント集では、個人の注意に頼るのではなく「事前にメンバーで話し合って使い方を検討し、ルールを決めるのがよい」としている。

 非装着型の移乗介助機器は、ハンモックのような布で利用者をつり上げ、移動するものが多い。介護者は力を使わなくて済む分、利用者の様子をよく見られたりコミュニケーションを取りやすくなったりする利点がある。半面、非装着型の移乗介助機器はそれなりに大きくて重く、機器の土台部分に介護者が足をぶつけたり、床との間に挟んだりする危険がある(図2)。

図2 非装着型の移乗介助機器での事例
図2 非装着型の移乗介助機器での事例
起き上がりが困難な利用者をハンモックのような布に乗せて持ち上げ、車いすなどに移乗させる装置。利用者だけでなく、介護者がけがをしないような配慮が必要になる。(出所:三菱総研「介護ロボットを安全に使うためのポイント集」)
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 移乗介助機器の操作中、介護者は利用者に集中するため、自らの足元にはなかなか注意を払えなくなる。このような機器を使う際は、あらかじめスリッパなどを履いて介護者の足を保護するよう、施設でルール化して運用を徹底する必要がある。

見守り機器の電源が入っていない

 見守り機器には、利用者がベッドから起き上がったり、ベッドに座って足を床に下ろしたり、さらに立ち上がったりする動作をセンサーで検出し、ナースステーションなどへ通報する機能がある(離床検知)。ずっと利用者のそばについていなくても状況が分かる利点がある。

 ところが、電源が入っていなかったために利用者の状態を把握できなかったという事例が複数あった(図3)。介護者は利用者が動いていないと思っていたが、実際にはベッドから起き上がり損ね、ベッドの脇に倒れていた、といったケースだ。ナースステーションでは見守り機器による通報の有無は確認していた一方で、機器自体の動作を確認する手順がなかった。

図3 見守り機器の電源が入っていなかった事例
図3 見守り機器の電源が入っていなかった事例
電源が入っていなかったために利用者の状態を把握できなかったケースが複数あった。(出所:三菱総研「介護ロボットを安全に使うためのポイント集」)
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 電源が切れる理由は停電などに限らず、通報に対応した後で介護者がセンサーのスイッチを入れ忘れてしまう、というパターンがある。在宅介護での見守り機器の例では、訪問介護で訪れた職員がベッド付近での作業時の発報を防ぐために電源を切って、そのまま退去したという例もあった。

モードの設定が不適切

 高機能な見守り機器では、適切なモードの設定も重要になる。例えば、離床してから発報するまでの時間を調整可能な機器がある。5分以上の長い時間を設定すると、利用者がトイレに行ってすぐ戻った場合などに不必要な通報を発生させずに済む。しかし、転倒などの事故が起こった場合に介護者が通報を受けて居室を訪れるのもそれだけ遅くなる。立ち上がり動作に不安が少ない利用者の場合などは長めに設定しても問題は起きにくいが、利用者の状況に応じて設定を変える必要がある。

 離床を検知する方法もさまざまあり、多種多様な機器を利用できる(図4)。最も簡易なのはシートやマット型の圧力センサーをベッド面や、ベッドのそばの床面に敷く方法。赤外線センサーや超音波センサー、介護用ベッドのアクチュエーターに入れた力センサーで検知する仕組みのものもある3)

図4 離床検知のためのさまざまなセンサー
図4 離床検知のためのさまざまなセンサー
利用者の状態や施設の状況、時間の経過による利用者の変化、場合によっては利用者の性格などによっても最適なセンサーがどれかは変わってくる。(参考文献3などを基に日経ものづくりが作成)
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 どの検知方法が最も適切かは、実際の利用者や施設の状況によって異なる。例えば、床面に圧力検知マットを敷く方法では、利用者の中には検知されるのを嫌がってまたいでしまう人がいるという。敷き方が適切でなくしわが寄っていると、利用者がつまずいたり、しわの上に移動式の椅子型トイレ(ポータブルトイレ)を置いて不安定な状態で利用者を座らせて転倒させてしまったり、といったトラブルの原因になる。