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 日立Astemo(日立アステモ)は「レベル3」以上の自動運転において、熟練運転者のような滑らかな操作を再現できるソフトウエア技術を開発した。これまでの高速道路などを対象にしたレベル3以上の自動運転システム(ADS)の競争軸は、「作成した軌道をいかに正確に追従するか」という点だった。これに対して、今後の一般道を対象にしたレベル3以上のADSでは、「クルマ酔い」の原因となる不快な揺れをできるだけ抑える「快適性」が新たな競争軸になる。快適性の向上を目指すADSの開発競争は激しさを増している。日立アステモは今回の新技術を武器に、国内外のメガサプライヤーに対抗する。

 日立アステモが開発した技術は、車載センサー情報や地図データを基にした「軌道作成技術」と、作成した軌道を正確に追従する「車両制御技術」を組み合わせたものである。自動運転向けECU(電子制御ユニット:AD ECU)に組み込んで利用する。

 同社のAD ECUは既に、ホンダが旗艦セダン「レジェンド」に搭載したレベル3の自動運転機能「トラフィックジャムパイロット」向けのECUとして採用されている(図1、2)。ただ同ECUは、高速道路や自動車専用道路の単一車線における「アイズオフ」注1)の自動運転機能などの実現を支えているが、クルマ酔いを防ぐといった快適性を実現する機能には対応していない。

注1)アイズオフとは、高速道路や自動車専用道路の渋滞時に、運転者が車両の周囲を注視しなくてもよい状態のこと。ただ、システムから運転の交代を要請された場合、運転者は操作を引き継がなければならない。

レジェンド
図1 ホンダの旗艦セダン「レジェンド」
世界で初めて、レベル3の自動運転機能「トラフィックジャムパイロット」を搭載した。(写真:ホンダ)
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日立アステモのAD ECU
図2 日立アステモのAD ECU(左)
高速道路や自動車専用道路の単一車線における「アイズオフ」の自動運転機能などの実現を支える。写真右はOTAユニット。(写真:日立アステモ)
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 日立アステモは今回の技術を組み込んだ製品を、最新のAD ECUとして国内外の自動車メーカーに提案し、早期の採用を目指す。同社技術開発統括本部次世代シャシー開発本部で車両統合制御技術開発部のシニアマネージャーを務める上野健太郎氏は、「既存のECUに今回の新技術を追加することは、現時点では考えていない」と言う注2)

注2)ホンダのレジェンドには、更新データを受信・管理する日立アステモの「OTAユニット」も採用されている。このユニットを使うと、通信回線経由でECU内のソフトを更新できる。そのため、既存のAD ECUに今回の新技術を追加することは、原理的には可能だ。

快適性を保ちにくい一般道の自動運転

 レベル3のADSで快適性が問題になる走行シーンの例としては、カーブを走行するときが挙げられる。高速道路や自動車専用道路のカーブで車線維持支援(レーン・キープ・アシスト:LKA)や車線中央維持(レーン・トレーシング・アシスト:LTA)の機能を使う際には、一定の速度で走行する場合が多い。高速道路や自動車専用道路はカーブが比較的緩やかである(カーブの半径が長い)ため、一定の速度で走行しても不快な揺れの原因となる「加速度の変化(ジャーク)」などを抑えやすい。

 これに対して一般道は、高速道路や自動車専用道路よりも曲がりの大きいカーブ(カーブの半径が短い)が多い。そのためカーブを走るときの速度が一定だと、大きなジャークが発生しやすい。また、急なS字カーブが連続する山道などでは、大きなジャークを発生させずに一定の速度で走行するのは難しい。これが車内の快適性を損ない、クルマ酔いの原因にもなる(図3)。

加速度やジャークを低減する軌道作成
図3 加速度やジャークを低減する軌道作成
道路の形状によって車速を変え、その車速に合わせて道幅を有効に使うことで、加速度やジャークを低減できる。日立アステモの資料を基に日経Automotiveが作成。
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