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 「今後は家電とサービスの融合、IoT(インターネット・オブ・シングズ)、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった『物でない要素』が増えてくる。こうした新しいことに取り組む場としては東京が適しており、この部分の開発を東京で強化したい」

 アイリスオーヤマ BtoB事業グループ LED・IoTソリューション事業部事業部長の本所翔平氏は、2021年8月2日に稼働を開始した同社の新たな研究開発拠点「アイリスオーヤマ東京R&Dセンター」(東京都大田区南蒲田)の狙いをこう話す。東京R&Dセンターは、研究開発本部を擁する中核拠点である宮城県の角田I.T.P(インダストリアル・テクノ・パーク)、家電開発に特化する大阪イノベーションセンターに次ぐ、同社の第3の研究開発拠点として、これまでの東京アンテナオフィスを拡充することで誕生した。家電、IoT関連、LED照明、ホーム製品の開発やデザインを担当する。

8月2日に稼働を開始した「アイリスオーヤマ東京R&Dセンター」。現時点で勤務する社員数は約100人で、そのうち半数が研究開発に携わる
8月2日に稼働を開始した「アイリスオーヤマ東京R&Dセンター」。現時点で勤務する社員数は約100人で、そのうち半数が研究開発に携わる
(写真:日経クロステック)
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 東大阪のプラスチック加工メーカーから1971年にスタートした同社グループは、22年度に“1兆円企業”への仲間入りを目指している。20年度のアイリスグループの売上高が6900億円なので、約1.5倍という高成長が必要になる。その成長源の1つが家電事業であり、さらにその先の成長をけん引するのが、IoTを活用した家電のサービス、BtoBのIoTソリューションやロボティクスなどの新規事業である。

アイリスグループ(海外事業を含む全体)、アイリスオーヤマ(家電、BtoBなど国内事業)、家電事業(国内)の売り上げ推移と予測。2022年度にグループ全体で1兆円突破を目指している。国内家電事業は20年度に1250億円の売上高を22年度に2150億円にまで引き上げる
アイリスグループ(海外事業を含む全体)、アイリスオーヤマ(家電、BtoBなど国内事業)、家電事業(国内)の売り上げ推移と予測。2022年度にグループ全体で1兆円突破を目指している。国内家電事業は20年度に1250億円の売上高を22年度に2150億円にまで引き上げる
(図:アイリスオーヤマ)
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 同社は売上高1兆円の突破に強気だ。「家電市場はパイが大きい。当社が販売している家電の種類はまだごく一部なので、今後も顕著に伸びていくだろう。さらに、BtoB事業もLED照明や顔認証型AI(人工知能)サーマルカメラ、ロボットなどしか手掛けておらず、(まだまだ取り組めることはあるため)成長余地が大きい」(本所氏)。

 実際、アイリスオーヤマは09年にLED電球で家電事業に参入して以来、空気を循環させるサーキュレーター、布団乾燥機、炊飯器、エアコン、洗濯機、冷蔵庫、そしてテレビなど製品ジャンルを急ピッチで増やし、大きく成長させてきた。同社は海外を含む家電事業全体の売上高を公表していないが、国内事業は10年度に100億円だったのが、20年度には1250億円と10倍以上に伸びている。

 さらに22年度には国内の家電事業の売上高を2150億円と約1.7倍にする計画だ。これによって、グループ内で国内事業を束ねるアイリスオーヤマにおける家電事業の比率は20年度の約57%から22年度には約61%に高まる。

 この急成長を支えてきたのが、幅広いジャンルの製品を数多く短期間に投入する開発体制と人材である。同社が1年間に発売する新製品は約1000アイテムで、総売上高に占める新製品(発売3年以内)の割合は6割以上に達する。

 この高速開発を実現できているポイントが、毎週月曜日に社長や各部門のトップが参加して開催される新製品開発会議、いわゆる「月曜会議」だ。執行役員で家電開発部 部長の原 英克氏は、「開発サイクルは大手メーカーとさほど変わらない。ただし、月曜会議で新製品提案が即断即決されるので開発スピードが速い」と話す。

 人材面では、国内の大手家電メーカー出身のベテラン技術者の存在が大きい。これまでそうした人材が多い大阪に研究開発拠点を構えることで、積極的に“吸収”してきた。東京R&Dセンターでも、新卒のエンジニアに加え、家電のエンジニアを中途採用していく。同センターには現時点で約50人の研究開発人材が勤務しているが、24年までに理系大卒社員を30人、高専卒社員を30人、中途社員60人の合計120人を採用する計画だ1

*1 グループ全体での採用を強化しており、大卒、高卒、中途を含め20年には625人、21年には922人、そして22年には1680人を採用する計画。
ベテラン技術者の知見を生かす。東京R&Dセンターでも、若手のエンジニアが開発についてベテランに相談するシーンが見られた
ベテラン技術者の知見を生かす。東京R&Dセンターでも、若手のエンジニアが開発についてベテランに相談するシーンが見られた
(写真:日経クロステック)
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