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 端末はほぼ全ての小中学校に行き渡ったものの、利用しているのは6割にとどまる――。政府が進める「GIGAスクール構想」において、配布する情報端末の活用が思うように進んでいない可能性が浮上した。原因を探ると、行政の縦割りに起因する根深い問題が見えてきた。

 政府は児童・生徒一人ひとりの理解度に応じた個別最適な学習の実現を目指して、2019年にGIGAスクール構想を発表。通信ネットワークや端末機器などの整備を進めている。端末配布のほかにも学習ソフトや「ICT支援員」などのサポート体制の整備といった事業にも取り組む。

 調査会社のMM総研は2021年8月25日、政府がGIGAスクール構想に基づいて配布したタブレット端末の活用状況を調査した結果を公表した。児童・生徒1万人とその保護者1万人の、合わせて2万人を対象にした調査である。それによると、「(端末が)配られており、利用している」との回答は63%だった。

MM総研の調査の結果、端末を活用している児童・生徒は全体の63%だった
MM総研の調査の結果、端末を活用している児童・生徒は全体の63%だった
(出所:MM総研)
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 これに先立つ2021年5月、文部科学省は全国の自治体における端末の納品状況に関する確定値を公表した。96.5%の自治体が「2021年3月末までに納品を完了する見込み」と回答した。ここでいう「納品完了」とは、端末が対象自治体にある小中学校の児童・生徒の手に渡り、インターネットの整備を含めて学校での利用が可能な状態のことだ。

 端末自体の納品率96.5%に対して、MM総研調べの利用率は63%。利用率が納品率より30ポイント以上も低いのはなぜなのか。

文部科学省が2021年5月に発表した確定値。96.5%の自治体が2021年3月までに端末を利用可能な状態にしたと回答している
文部科学省が2021年5月に発表した確定値。96.5%の自治体が2021年3月までに端末を利用可能な状態にしたと回答している
(文部科学省の資料を基に日経クロステックが作成、端数処理の関係で合計が100%にならない)
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クラス単位、児童単位で利用に温度差

 MM総研は「GIGAスクール構想は当初5年計画だったが、新型コロナ禍を受けて1年ほどで全部やり切ろうとしたため、リソース不足や準備不足になっている」と説明する。そのうえで文科省の調査結果について「文科省側は教育委員会単位、学校単位、学年単位での調査を通じて、ほぼ利用を開始しているとメッセージを出している」とした。一方MM総研の調査は児童・生徒とその保護者1人ひとりを対象にしたため、調査対象の粒度の違いが結果に影響したとみる。

 MM総研は端末利用が進まない理由は複数あるとしたうえで、「大きな理由の1つは端末のインターネット接続にある」と指摘した。