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 「買収先の事業規模は自社の2倍以上」「買収金額は売上高の7倍」「国内ベンチャーによる海外同業大手の取り込み」――。ビザスクが異例尽くしの大勝負に打って出る。

 ビザスクはビジネス分野の専門スキルを持つ人材と同スキルを求める企業のマッチングを手掛けるベンチャー企業だ。2012年に創業し、2020年3月に東証マザーズ市場に上場した。経営や法務、営業など専門分野を持つ15万人の「アドバイザー」を組織化しているのが強みで、企業から受け付けた相談と回答してくれるアドバイザーをネット経由でマッチングする。

 同社は2021年8月、米国の同業大手、Coleman Research Group(コールマン)の全株式を取得し、完全子会社にすると発表した。買収金額は約1億200万ドル(約112億円)で、11月1日(日本時間)の完了を予定する。デジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりを受け、海外の先進事例をいち早く知りたい日本企業へ、現地の専門家の知見を紹介していく構えだ。世界展開の時間を金で買う一手は奏功するか。

「日本国内には参考事例がない」

 「事業のグローバル展開を加速するため、時間を金で買った」。ビザスクの端羽英子最高経営責任者(CEO)は買収の狙いをこう説明する。ビザスクはシンガポールに拠点を持つものの、事業のほとんどを日本国内で手掛ける。

 一方のコールマンは2006年設立の同業大手。米国のほか英国、香港に拠点を持ち、26万人の専門家を組織する。両社の専門家データベースには重複が少なく、相乗効果を発揮しやすいとみる。ビザスクはコールマンを買収し、「日本と海外をまたぐクロスボーダーのビジネス知見マッチングを推進する」(同)。

「日本のベンチャー企業は成長の手法として、もっとM&A(合併・買収)をすべきだ」と語る端羽CEO
「日本のベンチャー企業は成長の手法として、もっとM&A(合併・買収)をすべきだ」と語る端羽CEO
(撮影:日経クロステック)
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 具体的には、まずコールマンの専門家データベースを生かして、欧米の先進的なビジネスモデルに通じた専門家と日本企業をマッチングする。狙いはDXに取り組む日本企業に、参考となる先進事例を紹介することだ。市場調査会社や証券アナリストから得られるマクロな視点での市場動向と違い、ビザスクやコールマンが得意とするのは「現地の業務や消費者ニーズに沿った具体的なビジネス知見」(端羽CEO)である。

コールマンの専門家データベースの概要
コールマンの専門家データベースの概要
(出所:ビザスク)
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 小売分野の新たなネットサービスや、スマホ金融をはじめとするFinTechの新サービスが一例。コールマンが組織する専門家の得意分野はITやエネルギー、消費財、ヘルスケア、金融と多岐にわたる。流行著しいフードデリバリーのように、今後数年内に日本でも流行しそうなDX事例をいち早く知りたい日本企業の需要に応える考えだ。

 「新しいビジネスモデルを探そうにも、そもそも日本国内には参考事例はない。海外の事例を自らくまなく探すのも難しい。コールマン買収により、日本企業が場所や言語にとらわれず欧米の先進的な知見にアクセスできるようにする」(端羽CEO)。欧米企業向けにも、ビザスクの専門家データベースを通じて日本市場への進出を後押しする。