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 「上場企業における数年間の決算短信情報(テキスト・データ)を基に、数年後のROA(総資産利益率)を予測せよ」――。大和総研の社員37人が、こんな研修課題に臨んでいる。チャットや対面で社内のデータサイエンティストに相談することも可能だ。2021年10月末をめどに、どんな分析手法を用いたのか、どのような分析結果になったかなどをリポートにまとめて提出する。

 課題に取り組む社員の所属はまちまちだ。システム開発や営業、コーポレート部門など、普段はデータ分析と無縁とみられがちな部門出身者も少なくない。今の研修が終わると、次のステップでは、データ分析の専門チームであるデータドリブンサイエンス部が抱える実案件にOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)として参加する予定だ。

大和総研によるデータサイエンティスト育成研修の様子
大和総研によるデータサイエンティスト育成研修の様子
提供:大和総研
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各部門によるAI活用につなげていく

 大和総研が、大規模なデータサイエンティスト育成に乗り出している。2021年3月に研修プログラムの参加を募ったところ、700人が応募。同社の全社員が1800人程度なので、実に4割近くに当たる計算だ。タイミングを分けて、希望者に研修を受けさせる方針でいる。

 「AI(人工知能)開発プロジェクトには、ビジネスニーズを反映できる人材が欠かせない。事業部門が仕様をまとめてSIerに開発を委託する従来型の開発案件とは違う」。研修プログラムを主導する、大和総研の伊藤慶昭フロンティア研究開発センターデータドリブンサイエンス部長はこう語る。AIの浸透によって開発の仕方が大きく変化しているというわけだ。

 AI活用の機会は今後、加速度的に増えていく。大和総研は、システム開発企業としての側面も持ち合わせている。データサイエンティストの大規模育成によって、変化に備える心づもりだ。

 特徴的なのは、多岐にわたる部門を対象にしている点。システム開発やITインフラだけでなく、営業部門などのITコンサルティング、人事部や財務部といったコーポレート、さらにリサーチといった業務に携わる人材が研修を受講する。システム開発部門などは、日々の業務に研修で得た知見を直接生かせる。では、営業部門やコーポレート部門まで参加するのはなぜか。

 営業部門であれば、テクノロジーを深く理解しておくことでAIを活用したシステム開発の提案に生かせるという期待がある。ただし、それだけではない。営業部門自身がAIを活用した営業ツールを構築する、といったことも見据えているという。

 コーポレート部門も同じだ。法務部門であれば契約業務の効率化、人事部門であれば社員管理の高度化に向け、各部門によるAI活用につなげたい考えである。「特にコーポレート部門には(AI活用の)材料がたくさんある」と伊藤部長は指摘する。ゆくゆくは営業部門と連携して、外販の種にしてほしいという青写真も描く。