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 新型コロナウイルスの感染拡大による移動の制限が、人口減少で既に採算が悪化していた地方の交通機関に追い打ちをかけている。公共交通は車を運転できなくなった高齢者など「交通弱者」にとって不可欠だ。移動の自由を確保するために、ITを活用した今までにない交通サービスが生まれている。

 地方の公共交通では補助金による赤字の補填が常態化している。国土交通省によると、コロナ禍より前の2018年度時点で約7割の路線バス事業者の事業収支が赤字、19年度時点で約8割の地域鉄道事業者が経常赤字だった。しかも20年度はコロナ禍の影響で、国内の鉄道大手も軒並み最終損益が赤字に転落した。さらに路線を廃止せざるを得ない事業者が増える可能性がある。

 そんな日本の交通問題を解決しようと立ち上がった企業の1つが、ソフトバンクが16年に設立した子会社BOLDLY(ボードリー)だ。同社が手掛けるのは、自動運転バスの運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」。20年度に国内で実施した自動運転バスの実証実験のうち、約半分が同システムを利用している。

茨城県境町を走る自動運転バス
茨城県境町を走る自動運転バス
(出所:BOLDLY)
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LINEで呼べば来るオンデマンド運行スタート

 鉄道駅がない茨城県境町はDispatcherを利用し、20年11月から自治体としては全国で初めて自動運転バスを定常運行している。21年8月には東京駅直結の高速バスにすぐ乗り換えられるバス停などを新たに設け利便性の拡充も図った。

 同年9月以降には、境町の住民から募集したモニターを対象にバスのオンデマンド運行を開始し、走行距離を従来の4倍の約20kmまで拡大する計画だ。従来は定時運行のみだった。オンデマンド運行では対話アプリ「LINE」からバスの予約が可能。さらに利便性が増す見通しだ。

境町でオンデマンド運行する自動運転バスを対話アプリ「LINE」から予約するときのイメージ
境町でオンデマンド運行する自動運転バスを対話アプリ「LINE」から予約するときのイメージ
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 ただ、肝心なのは、この自動運転バスが将来にわたって継続的に走れるかどうかだ。現在、境町の自動運転バスは同町が確保した5年間で約5億円の予算によって支えられており、運賃は無料となっている。では6年目以降はどうするのか。同社社長の佐治友基氏の頭の中には、事業を持続可能なものとするための青写真が既にある。