日立製作所は技術系のインターンシップに「ジョブ型」を取り入れ、2021年8月にその様子を公開した。61個のテーマを設け、ジョブディスクリプション(職務記述書)を学生に明示した上で選考した。専門性の高い理系学生の獲得競争が激化する中、同社初の試みとなるジョブ型インターンはその妙手となるか。
「ジョブディスクリプション」を公開して募集
「自然言語処理に関する内容について長期でインターンできる会社を探していたら今回のインターンシップにたどり着いた」。取材に応じたインターンシップ生の3人中2人がそう答えた。
「ジョブ型雇用」とは、仕事内容や労働時間、勤務場所などを限定した正社員の雇用形態を指す。特定された労働の種類を職務(ジョブ)と呼び、欧米では主流の雇用形態だ。日立は積極的にジョブ型の人事制度の浸透を進めている。新卒採用についてもジョブ型雇用に適した選考ができるよう整備しており、ジョブ型インターンシップはその一環だ。
ジョブ型インターンシップの特徴は2つある。1つはジョブディスクリプションを明示していること。もう1つは社員に対するジョブ型のマネジメント方法をインターンシップに参加する学生にも適用していることだ。
インターンシップの募集に際して日立が公開したジョブディスクリプションには「(募集テーマの)内容」「専攻分野」「必須となるスキル・経験等」「あれば望ましいスキル・経験等」といった項目がある。
インターンシップには61個のテーマがあり、今回同社が公開したのは「フェイクニュースをはじめとする情報信憑(ぴょう)性問題を解決する言語処理技術の研究開発」というテーマのインターンシップだ。
自然言語処理や機械学習を用いて、テキストの信頼性を評価する手法をそれぞれの学生が提案する。ここで「必須となるスキル・経験等」は、自然言語処理の基礎知識とPythonの使用経験。「あれば望ましいスキル・経験等」には、評価型ワークショップや技術コンペティションへの参加経験とある。
「大学で普段学んでいる技術が、企業の研究でどのように生かされているのか知りたかった」。インターンシップに参加した理系大学院修士1年の竹中幹さんはこう話す。必要なスキルなども具体的に示されているため、参加する学生はインターンシップで取り組む内容を想起しやすい。それぞれが取り組む研究を軸に企業での働き方を考えるきっかけにもなる。