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組織の縦割り構造に悩むメーカーは多い。例えば、現場のノウハウが共有されず、同じような取り組みを別の事業部でやっていたというケースだ。パワー半導体やそれらを使ったパワーモジュールを手掛けるサンケン電気も、こうした課題を抱える1社だ。そこで同社は課題解決のため、埼玉県新座市の本社敷地内に「ものづくり開発センター」を新設し、開発の効率化に動き出した。全国の子会社から数十人の技術者を招集し、品質検査の自動化や混流生産などの新しい生産技術の開発に取り組む。一定期間が過ぎると、集めた技術者たちを元の工場に戻し、このセンターで培った技術を子会社内に普及させる。つまり、グループ内の連携を強化して、生産性を高めるのがこのセンターの狙いだ。同社 代表取締役社長の高橋広氏に取り組みについて聞いた。(聞き手=土屋 丈太、野々村 洸)

サンケン電気 代表取締役社長の高橋広氏
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サンケン電気 代表取締役社長の高橋広氏
(出所:日経クロステック)

生産技術の開発において、これまでどのような課題がありましたか。

 当社には石川、山形、鹿島、福島と全国4カ所注1)に子会社がありますが、おのおのが自分たちのペースで技術開発をしていました。たとえば、生産性向上のために個別にAGV(無人搬送車)を導入することがあれば、ワイヤボンディングやチップ接着技術を自分たちで改良することもありました。つまり、ある拠点で開発した技術を別の拠点で改めて開発していたわけです。これでは効率が悪い。こうした背景には、これまで子会社間の出向はあるものの技術者の転籍はなく、各社の独立性が非常に高かったという事実があります。そうしたところから、当社グループが一丸となって生産技術を開発する拠点の構想が出てきました。こうして21年5月にものづくり開発センターを開設して、全国の工場から数十人の技術者を集めました。

注1)今後の構造改革によって、石川と山形と福島の3子会社となる。
開設したものづくり開発センター
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開設したものづくり開発センター
(出所:サンケン電気)

このセンターで具体的にどうやって課題を解決するのですか。

 各子会社の技術者が1つの拠点に集まって生産技術を開発するのです。時期がたてば、技術者には新しい技術と一緒に元の工場に戻ってもらいます。こうした体制で効率的に開発していきたいと考えています。

 ものづくり開発センターには、主に30~40代の各技術にたけた中堅の技術者を集めました。彼らには経験に裏打ちされたマインドや自負があるため、最初のうちは意見が衝突するかもしれません。けれども、同じ場所でさまざまな人たちと意見を出し合うことは、「気づき」を生むきっかけになると思います。たとえば、自分たちの工場では良いと考えていたことも、他の工場の人や本社の人と比較することで、弱かった面も見えてくるでしょう。同時に、自分たちの本当に強い面もわかってきます。こうした経験を積んでもらいたいと思います。

 石川サンケン(石川・志賀町)の堀松工場で従来LEDの灯具を生産していた建屋をこのほど、パワー半導体モジュール用に改築しました。このパワー半導体モジュールの生産現場を、本社にあるものづくり開発センターで学んだ技術者が里帰りして、石川サンケンに普及させていく中心的な場所にしたいと考えています。石川サンケンにサンケン電気本社の人間を駐在させることで、つながりを密にするつもりです。

独立性が高かった各子会社に新技術を浸透させるのは困難ではないですか。

 各工場へ新技術をスムーズに導入できるよう、技術者にはものづくり開発センターにいるうちから、その技術を生産工程に導入するイメージを持って開発に取り組んでもらいます。そのために、センターにはパイロットラインを用意してあります。そこで開発した技術を各工場に持っていく予定です。