ワクチン接種証明書の発行には、政府が整備した「ワクチン接種記録システム(VRS)」を使う。職員が申請書の記載内容をもとにVRSに入力して申請者の情報を照会し確認したうえで、ワクチン接種証明書を出力する流れだ。
VRSでは個人の接種記録を、マイナンバーとひも付けて管理している。ぴったりサービスで申請を受け付け、そのままVRSでワクチン接種証明書を発行できれば、紙での作業が必要なくなり職員の手間は大きく省ける。だが現状は、オンライン申請からワクチン接種証明書の発行までエンドツーエンドでシステムが連係していない。
2点目は紙での申請には必要ないマイナンバーの記入が、ぴったりサービスを利用すると必要になる点だ。それによって自治体では利用開始前に特定個人情報保護評価(PIA)を行う必要が出てくる。
そのうえ、そもそもぴったりサービスを活用できていない自治体もある。政府は6月からぴったりサービスを全自治体で利用できるように改修した。ただ「テストしてもちゃんと動かないケースもあり、テスト自体を実施していないため使えない自治体も多いのではないか」とある自治体の情報部門担当者は言う。
独自に用意したオンライン申請を活用
海外渡航者向けのワクチン接種証明書の発行は7月26日に始まったが、その時点で政府が整備したのは紙による申請の事務フローのみだった。多くの自治体では現状、窓口に出向いたり郵送したりして申請した人に対して、紙の証明書を交付している。政府がぴったりサービスを活用したオンライン申請の仕組みをスタートさせたのは、1カ月近く経過した8月23日のことだ。
一方、すでに汎用的なオンライン申請の仕組みを整えてきた自治体では、ぴったりサービスではなく、独自に用意したオンライン申請の仕組みを活用している。