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 東芝は2021年9月、フレキシブル基板上に形成した大面積ペロブスカイト太陽電池(PSC)としては最高水準の変換効率15.1%を達成した(動画)。

動画
東芝の新しい24.15cm×29.10cm(約703cm2)のペロブスカイト太陽電池(出所:東芝)

 東芝は以前から「メニスカス塗布法」と呼ぶ大面積の基板上に均一に成膜しやすい技術を採用していた。ただし、大きく2つ課題があった。1つは、2ステッププロセスだったことだ。具体的には、ペロブスカイトの層であるMAPbI3膜を形成するのに、前駆体となるヨウ化鉛(PbI2)のインクを塗布し、それが乾燥してからヨウ化メチルアンモニウム(MAI)インクを塗布する手順だった。このプロセスでは、膜の厚み方向にPbI2とMAIの反応バラつきが生じ、未反応のPbI2やMAIが残ることがあったという(図1)。

図1 塗布回数が2回から1回でスループットは50倍に
図1 塗布回数が2回から1回でスループットは50倍に
東芝のペロブスカイト太陽電池の従来の製造プロセス(a)と今回(b)。従来は、PbI2インクを先に塗布し、それが乾燥してからMAIインクを塗布する2ステッププロセスで、MAPbI3膜を形成していた。ところが塗布速度はそれぞれ0.2m/分以下と遅い上に、厚み方向の化学反応に不均一さが生じて、未反応のPbI2やMAIが一部に出ていた。今回は、当初からPbI2とMAIを混合した溶液を塗布する1ステッププロセスに変えたことで、塗布速度が6m/分になった。スループットは従来の50倍に高速化したとする。特性も電流値が改善し、変換効率は14.1%から15.1%に向上した(c)。(出所:東芝)
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 もう1つの課題は、そもそも塗布可能な速度がそれぞれ0.2m/分以下と遅かったことだ。

 一方、今回はPbI2とMAIの混合インクを1回塗布してそれを反応させる手法を採用した。実験室などで使うスピンコート法では採用例があったが、量産を想定した成膜プロセスでは初めて。MAPbI3の結晶成長で均一性を保ちながら制御するのが難しかったという。塗布速度は最速で6m/分と従来の30倍以上。しかも2ステップが1ステップになったことで、スループットは50倍以上になったとする。

 膜厚方向の不均質さが低減したことで、変換効率は従来の14.1%から1ポイント向上した。