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 インターネット専業証券のauカブコム証券は2021年3月、証券取引サービスなどを含めたすべての情報システムの基盤を刷新した。自社のデータセンター(DC)で運用していたシステムをアット東京のDCに移設するとともに、仮想化技術で物理サーバーを集約。日本ヒューレット・パッカード(HPE)が提供するITインフラの従量制サービスなども導入して、インフラの最適化を進めた。

auカブコム証券が構築した新システム基盤の概要
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auカブコム証券が構築した新システム基盤の概要
(出所:auカブコム証券)

 これまで1000台近くあった物理サーバーを約160台まで減らしたことなどで、DCの面積を約5割、消費電力を約6割削減できた。同社の執行役員でシステム統括を担当する小﨑敬介氏は「システムのTCO(総所有コスト)を38%削減することに成功した」と話す。サーバーやストレージなどのハードウエアを刷新したため、システム全体の処理能力も向上した。例えば、主要な夜間バッチ処理にかかる時間が3分の1に短縮されたという。

 auカブコム証券は1999年の設立以来、基幹システムも含めてほとんどのシステムを内製している。従来はこれらのシステムを、東京都中央区新川の同社オフィスに隣接するDCで運用していた。この従来のシステム基盤には、3つの課題があったという。1つはシステムに求められる安全性や耐災害性だ。近年、集中豪雨などによる災害の懸念が高まっている。同社システム技術部長の宮本喜与士氏は「河川の氾濫などのリスクを考えると、耐災害性をもう一段レベルアップする必要性があった」と話す。

 2つ目はシステム資源の利用効率の悪さだ。証券業務では取引量が突発的に急増することがある。従来のシステム基盤は物理サーバーを中心に構成していたので、システム資源の柔軟な割り当てが難しかった。そして3つ目が増え続ける証券の口座数や取引量に対応するためのコンピューティングパワーだ。事業のさらなる拡大に向けて、より大きなコンピューティングパワーを確保しやすい基盤を整備する必要があったという。

 こうした課題を解決すべく、2017年後半ごろからシステム基盤の抜本的な見直しの検討を始めて、2018年10月に移設を決定した。