全1967文字
PR

 中小企業の事業承継やM&A(合併・買収)が日本経済の一大課題となる中、デジタル技術を生かした新手のマッチングサービスが登場した。一般的なマッチングサービスと違い、仲介や成約の手数料は無し。月額定額のサービス利用料を収益の基本とするのが最大の特徴だ。自社サービスを金融機関にSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供し金融機関オリジナルのM&Aプラットフォームを作れるようにしたり、AI(人工知能)でマッチングを支援したりと、デジタルをフル活用する。

 手数料方式の事業承継マッチングは無理な営業を生みやすく、売り手と買い手の双方から手数料を徴収する既存事業者もいる。利益相反を生み健全な事業承継を妨げると、河野太郎規制改革相が改革の必要性を訴えている。デジタル技術を駆使した新手のサービスは、事業承継の構造問題を解決する可能性を秘める。

フリーミアム方式を採用、AIで企業価値算定を支援

 スタートアップのM&Aナビが2021年3月に刷新した同名のサービスがそれだ。事業や企業の売り手が案件を専用Webサイトに登録し、希望する買い手とのマッチングを支援する。売り手の希望売却価格は5000万円未満が4分の3を占める。内容はITサービスやソフトウエアから製造、建設、卸・小売り、住宅・不動産、医療・介護、飲食まで幅広い。

M&Aナビの案件掲載画面
M&Aナビの案件掲載画面
(出所:M&Aナビ)
[画像のクリックで拡大表示]

 古民家風カフェが400万円、ペットサロンが300万円、整骨院が220万円――。同社サイトにはEC(電子商取引)サイトさながらに案件が並ぶ。学習塾や美容サロン、飲食店は希望売却価格が比較的低く、個人の買い手が付きやすいという。老舗の工作機械製造会社が6億円など、数億円規模の案件も少なくない。登録会員数は買い手が5500人余り、売り手が600人弱。サイトには常時100件ほどの案件を掲載している。

 ビジネスモデルの最大の特徴は、基本無料で高機能版を有償で提供するフリーミアム方式であることだ。会員登録から案件の検索、買い手候補からの購入依頼(オファー)、双方の面談、合意した後の契約締結まで基本的な機能を無料で提供する。現在は無料版のみとなり、2022年中にも提供する有償版の料金は月額5万円程度を予定する。有償版では買い手から料金を徴収。一部の非公開案件を閲覧できるほか、一般の案件についても無料会員より2週間ほど早く見られるなどの特典を付ける。